10301.jpg
「痴漢」で逮捕されたことが会社にバレて、配置転換命令…従う必要はある?
2017年04月30日 09時51分

痴漢で逮捕されたことを理由に会社から異動・退職などを命じられた場合、従わなければならないのかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこのような投稿が寄せられました。

投稿者は、痴漢をしてしまい、迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されましたが、結果は不起訴でした。しかし、会社に痴漢の事実が伝わった後、会社から遠方への配置転換を命じられ、従わなければ解雇だと告げられたそうです。

逮捕されたことを理由に、配置転換や解雇というのは妥当なのでしょうか。起訴された場合とされていない場合で違いはあるのでしょうか。近藤暁弁護士に聞きました。

痴漢で逮捕されたことを理由に会社から異動・退職などを命じられた場合、従わなければならないのかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこのような投稿が寄せられました。

投稿者は、痴漢をしてしまい、迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されましたが、結果は不起訴でした。しかし、会社に痴漢の事実が伝わった後、会社から遠方への配置転換を命じられ、従わなければ解雇だと告げられたそうです。

逮捕されたことを理由に、配置転換や解雇というのは妥当なのでしょうか。起訴された場合とされていない場合で違いはあるのでしょうか。近藤暁弁護士に聞きました。

●配置転換命令が無効となる場合とは?

配置転換命令については、労働契約に職種や勤務場所の限定がない限り、会社に広く裁量が認められます。しかし、(1)業務上の必要性がない場合、(2)業務上の必要性とは別の不当な動機・目的等がある場合、(3)配転により労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じる場合、配転命令は権利の濫用として、無効となります。

今回のケースでは、企業秩序の維持といった「業務上の必要性」により配転命令がなされた可能性もありますが、定かではありません。

もし配転命令が痴漢行為や逮捕の事実に対する制裁といった動機・目的によるものであれば、「不当な動機・目的」によるものとして権利の濫用となるでしょう。刑事事件の被疑者・被告人の有罪が確定するまでは、無罪の推定を受けることとの関係でも問題があります。これは起訴された場合でも、されていない場合でも違いはありません。

ちなみに、有罪判決が確定した場合でも、これに対する制裁として配転がなされるのであれば、配転の動機・目的としては不当といえます。ただし、有罪判決などによる業務の混乱や支障を解消するために配転がなされるのであれば、業務上の必要性があるといえ、動機・目的も不当とまではいえないでしょう。

また、単に遠方への配転というだけでは通常「労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」とはいえませんが、業務上の必要性の有無や内容によっては権利の濫用となる余地があります。

有効な配転命令に従わない場合、配転理由の説明や説得等の手続を踏んだ上であれば、解雇も有効となるでしょう。これに対し、配転命令が無効である場合、これを前提とする解雇も無効となります。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る