この事例の依頼主
40代 男性
約1000万円の借金の大半がオンラインカジノで作った借金であるという会社員男性のご相談でした。給与は比較的高額であり、借金の5分の1にあたる約200万円を3年間で弁済する再生計画とした場合の履行可能性には問題が無さそうでしたが、借金をオンラインカジノで費消してしまった事実、他に隠匿等していない事実について、必要な資料を提出できるのかに不安を覚える事案でした。オンラインカジノを運営する海外の事業者が必要な資料を提供してくれるのか定かでありませんでしたし、相談者が過去に利用していたサイトは現在、閉鎖されていて、当該業者とは連絡が取れないという事情があることも不安要素でした。しかし、できる範囲で誠実に報告すれば、裁判所の理解は得られるだろうという見込みのもとに個人再生を申し立てる方針で受任しました。本人には、ギャンブル依存症の治療を受けるよう助言しました。
本人がオンラインカジノの運営業者に取引履歴を申請したところ、書面データの交付があったのですが、一見して記載内容を理解できるような資料ではありませんでした。しかし、口座残高がゼロであることや、口座への入出金を読み取ることは可能で、預金通帳の入出金と照合することで、お金の動きを確認できるとは言えそうでした。裁判所には、それらの資料を提出するとともに、上申書で資料の読み方を説明し、サイトが閉鎖されていて取引履歴を出せない過去の取引については資料を出せない事情等を説明しました。また、本人がギャンブル依存症の治療のため通院していることを報告し、クリニックの領収書を提出しました。その結果、裁判所から、個人再生委員の選任が必要と言われることが無かったことはもとより、オンラインカジノ関係で追加の資料提出を求められることもなく、再生計画の開始決定を得ることができました。その後、手続は順調に進行し、無事、再生計画の認可決定を得ました。
受任時には、裁判所に納得してもらえるだけの資料を収集・提出できるのかに不安がありましたが、実際には円滑に手続きを進めることができました。裁判所も不可能を強いるものではないので、資料収集に一定の困難が見込まれる事案であっても、できる範囲で誠実に収集し、丁寧に報告すれば、通常は、それで手続きは遂行できるものだと改めて思った事案でした。