犯罪・刑事事件の解決事例
#欠陥住宅

設計士と工事業者から別々の裁判所に訴えを起こされた施主が,両名に対して損害賠償請求訴訟を提起して事件を一つの裁判所で審理させることに成功して,一挙に解決に至った事案

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長屋 興 弁護士が解決
所属事務所ながや法律事務所
所在地大阪府 大阪市北区

この事例の依頼主

男性

相談前の状況

依頼人は,ネットで建築士を選び設計及び管理を委託した。ところが,建築士の設計した建物は建築基準法に違反する内容であったが,建築士がこれを依頼人に黙っていた。工事業者の工事方法も杜撰であったが,もともと建築士の設計が根本的に誤っていたことから,建物は高さ制限に違反したものとなり,かつ工事の瑕疵のために建物内部に壁と床の隙間から水が入るという重大な欠陥住宅となった。ところが,建築士を信頼していた依頼人は,建築士がきちんと仕事をしているものと思い込んで工事業者に対して,最終工事代金の支払いを拒んでいたところ,工事業者から残代金請求の訴訟を提起され,そのことを建築士に相談したところ,建築士は工事の欠陥についてはあやふやな説明に終始し,依頼人において弁護士に相談したところ,建築士の設計管理にも問題があることが判明するや,その建築士は手のひらを反して依頼人に設計管理の報酬請求の訴訟を提起してきた。それぞれの裁判が別々の裁判所に提起された。

解決への流れ

依頼人は,建築業者からの残代金請求の裁判と建築士からの設計・管理の報酬請求の裁判を別々の裁判所で提起された。そこで,弁護士は建築士と業者に対し,不法行為及び請負人の担保責任に基づく損害賠償をもとめて,大阪地方裁判所に訴えを提起し,別々の裁判所において継続していた前2件の事件を,大阪地方裁判所の建築専門部に事件を移送させて事件を一挙に審理させることに成功した。弁護士は建築士と一緒に建物の欠陥部分を調査し,建築士に修理方法及び費用の見積についての意見書を作成してもらい,また不動産鑑定士に建築基準法違反の建物の評価損について鑑定書の作成して損害の立証に成功した。最終的には依頼人の主張がほぼ認められ,和解によって解決した。

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長屋 興 弁護士からのコメント

依頼人は,建築士を信頼していたことから,建築途中の建物が建築基準法違反の建物になることに考えが及ばず,建築士の言う通りに業者の工事にのみ欠陥があると信じていた。それゆえ,工事業者との間で残代金工事の支払いについてもめていたところ,工事業者から訴えを提起されてしまった。この対処について依頼人は信頼していた建築士に相談したところ,結局その建築士にも裏切られて反対に建築士からも訴えを提起され,それぞれが別々の裁判所に係属することになってしまった。このように別々の裁判所に訴訟が継続すると,統一した判断を裁判官がとれないことになり,依頼人にとって不都合である。そこで,建築専門部のある大阪地方裁判所に対し,建築士と工事業者双方に対して損害賠償請求の訴訟を提起するとともに,すでに別々の裁判所に継続していた先の2つの事件を建築専門部に移送させることが必要となった。すでに継続している裁判所の裁判官は,先の2つの事件は必ずしも欠陥などが争点にならないといって移送に難色をしめしたが,弁護士が設計図書を裁判官の前で広げて示し,具体的な欠陥を指摘したうえで,このような内容が建築専門部でない部署で審理することは適切ではない旨主張して,なんとか建築専門部で一挙に審理することに成功した。そのあとの審理については,建築士と不動産鑑定士に依頼して鑑定書を作成してもらい,裁判所に証拠として提出した。最終的には依頼人の主張がほぼ認められる内容の和解となった。本件では,建築士がきわめて悪質な業者であり,自らのミスを依頼人に全く説明していなかったことが事の発端である。建築士に依頼して設計管理を依頼する場合には,その設計士が誠実な人物であるか,専門家として確かな知識を有しているかを判断することは建築の素人である多くの施主には困難である。そのため設計途中までの経過などもきめ細かに文書にして残しておく必要がある。また,欠陥住宅の事件では業者からの請負代金請求が先行することがあるから,これに対抗するために欠陥の証拠を集めて適宜に反訴または別訴を提起する必要がある。施主が自ら業者と交渉して解決を図ろうとすると,証拠が散逸したりするなどして後に訴訟となったときに不利な戦いとなる場合もあることから,早めに弁護士に相談し,建築士と共同して対処することを心がける必要がある。