この事例の依頼主
30代 男性
私は、数年前に、10年ほど交際していた女性Aと別れましたが、Aから、別れた後の生活費や、交際中にAに怪我をさせてしまったことについての治療費の支払いとして100万円を請求されました。私は、当時100万円を一括では用意できなかったため、これを毎月数万円ずつ支払っていたところ、不満に思ったAから「200万円払え」と請求されました。私がこれを拒否すると、Aは、「あんたの勤務先にあんたが私にした仕打ちを知らせてやる」「払わないなら裁判に訴える」等と脅してきました。Aが怪我をしたのは私のDVのせいであり、DVによる精神的苦痛もあったことは事実ですので、私はこれに応じ、引き続き分割払いを続けました。その後、私は新たにBと言う女性と知り合い、交際を始めましたが、これを知ったAから、「300万円払わないと勤務先に連絡する」「訴える」と脅されました。恐怖を感じた私は、その場を取り繕うため、「わかった」と返事をしましたが、しばらくすると、今度はAが「400万円支払え」「こっちには怖い人がついていて、あんたの職場に行くこともできる」等と要求をエスカレートさせてきました。しかし、実は、私はAの治療費が実際にいくらかかっているのか、明細などを全く見せてもらえないままでしたので、未だに未払い分があるのか否かもわかりませんでしたし、このまま無限にお金を要求され、脅される生活が続くのか、また、万一Bの身に危険が及ぶようなことがあったらと思うと、恐ろしくてたまらなくなり、弁護士に相談しました。
弁護士に相談したところ、Aの言う治療費については、診断書や病院代の明細などを開示してもらった上で、当初Aと約束した200万円に不足している部分(5~60万円程)を支払い、他方、Aには、それ以上の請求をしないことを約束してもらうという和解を目指すのはどうかとアドバイスされました。私は、概ねそういう方向性で良いと思いましたので、交渉の代理をお願いし、やっと私自身が直接Aと交渉しなければならないストレスから解放されました。その後、Aが、弁護士からの連絡になかなか回答しなかったり、根拠の不明なさらなる金銭請求をしてくる等のこともありましたが、最終的には和解をすることができ、私の恐怖もようやく終わりを告げました。
本件は、相談者による交際中のDVが原因で怪我をした相手方から、相談者が治療費や別れた後の生活費を請求され、支払っていたところ、徐々に金額を吊り上げられ、払わないとDVのことを職場にばらす等と脅されるようになった事案です。いくら損害賠償を請求する正当な権利があっても、相当な額をはるかに超えて支払を要求したり、ましてや支払義務者を脅す等ということは認められません。相談者は、相手方との間で支払うと明確に約束した200万円については、きちんと支払うおつもりでしたので、まずは相手方に治療費について開示するよう求めるとともに、200万円に不足している部分は支払うが、それ以上については、脅迫により支払約束は成立しないこと、残額等の開示もせずにこれ以上の請求を続けるようであれば、債務不存在確認請求訴訟や、不当利得返還請求訴訟等を提起する予定であると記載した通知書を送りました。そうしたところ、相手方はあれこれ言い訳をしたり、「警察に行く」と言ってみたり、突如、「私と前夫との間の子の養育費も相談者が払うと約束していたから払って欲しい」と言い出す等しましたが、最終的に、相談者が50万円の支払と、相手方が生活のために借り入れたお金(10万円ほど)を代わりに返済するという内容で合意することになりました。ところが、私が当該内容の合意書を作成し、相手方に送ったものの、相手方は一向に記名・押印してこれを返送してこず、何度電話してもなしのつぶてで、2ヵ月ほど連絡が途絶えてしまいました。そこで、いよいよ相手方に対し債務不存在確認請求訴訟を提起しようとしていた矢先、ようやく連絡があり、先の内容で和解を成立させることができました。結局、相手方が治療費の明細を開示することはないままでしたが、相談者には平穏な生活を取り戻すことができました。