この事例の依頼主
20代 女性
私はアルバイト先の上司であるA氏から、数ヶ月にわたり体を触られる等のセクハラを受けていましたが、大ごとにして他の方に迷惑がかかったり、自分が解雇されたりしたらどうしようと思い、ずっと我慢していました。しかし、ある時、アルバイト仲間である別の女性も同じA氏から同じようなセクハラを受けていたことを知り、私は勇気を出して、さらに上司であるB氏に、被害を訴え出ました。私はB氏に依頼して、B氏立ち合いのもと、今後についてA氏と話し合う機会を作ってもらいました。話し合いの席で、A氏は私に謝罪し、退職すると宣言しました。私は、A氏のセクハラにより、精神的ショックで不眠症や食欲不振等、身体に不調が出ていましたので、追って慰謝料の請求もしたいと思い、さらにまた今後については連絡しますと述べ、いったん話し合いを終えました。B氏が立ち会って下さってはいましたが、私ははっきりした証拠を残しておきたいと思ったので、この話し合いを録音していました。そして、慰謝料請求の仕方について、弁護士に相談しました。
弁護士は、まずはA氏に対し、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)として300万円を請求する旨の通知を内容証明郵便で送ってくれました。これに対し、A氏は直ちに自分も弁護士に依頼して回答書面を送ってきたのですが、そこに書かれていたのは、そもそもセクハラと言うのは言い過ぎで、私自身も全く拒んでいなかったが、B氏に強く詰め寄られたので、やむなく謝罪の言葉を口にしたに過ぎないとか、B氏同席の話し合いの場で全ては終了しているから、慰謝料を払ういわれはない等といった、私の精神的苦痛を無視する、ひどい内容でした。私は、この書面を見て、さらに精神的ショックを受けましたが、弁護士のアドバイスで、録音してあった話し合いの音声を反訳し、その一部を添付して、再度慰謝料を請求する手紙を送ってもらったところ、A氏は態度を一変させ、150万円を一括で慰謝料として支払うと言ってきました。私は、訴訟になった場合の費用や時間的手間等も考え、その額で和解に応じました。
本件では、セクハラをした相手方が、一度相談者に謝罪をしていたものの、後になって「相談者も行為を拒んでおらず、セクハラとは言えない」「謝罪したのは、上司Bに強く言われたので、やむなくしただけ」等と言い出し、慰謝料請求に応じようとしませんでした。しかし、相談者が、相手方が謝罪した時の様子を録音してあったため、これを文章に起こして添付し、「これでも否定するようなら直ちに訴訟を提起する」との通知を再び送ったところ、一転して慰謝料の支払に応じてきたものです。本件では、音声がなかったとしても、謝罪の場に立ち会った第三者がいることから、さらに交渉すれば、相手方が慰謝料の支払に応じた可能性は高いでしょう。しかし、相手方は、「音声」というはっきりした証拠があることを突き付けられ、しゃべった内容が全て残っていることがわかったため、訴訟になってはかなわないと知り、すぐに態度を変化させてきたものと思われます。結論としては、当初の請求額の半額での和解となりましたが、相談者も、さらなる交渉や訴訟にかかる時間的・経済的負担を考え合わせ、それらの負担を負うよりも、早く解決して落ち着きたいとのことでしたので、このような内容になりました。最初の慰謝料請求から半年以内での解決でした。