この事例の依頼主
男性
相談前の状況
Aさんは、明け方暗がりの中、大型トラックを運転していたところ、警察に呼び止められた。新聞配達の原付バイクが併走していた際、転倒し、被害者を轢いたという内容であり、Aさんはひき逃げに気付かず、現場から数10㎞走行したところを警察に呼び止められたものであった。Aさんは、自動車運転過失致死罪と道路交通法違反(ひき逃げ)で逮捕され、公判請求された。
解決への流れ
Aさんはひき逃げの故意を否認していたため、当事務所の働きかけで再現実験を行い、検察側が主張する「轢下」(タイヤが被害者の頭を乗り上げた)とは客観的に態様が異なり、タイヤと被害者の頭がかすめるように接触した事件であることを明らかにし、大型トラックで衝突時に微動だにしなかったことを目撃者に証言してもらいました。検察側主張がすべて提出された段階で、Aさんは保釈が認められました。判決で、Aさんは、轢いた可能性の認識(未必の故意)の認定はされたものの「轢下」ではないと認定され、態様も悪質とまで言えないとして執行猶予となりました。
まず身柄の点では起訴され、検察側の主張が提出されるまでの期間勾留されたことになります。被告人が犯行そのものを認めていたとしても、警察、検察の大筋の言い分に合致しなければ、部分的に否認事件となります。今回のケースは、事故を起こしてしまったことには違いはありませんが、「事故を起こした時点では気づかなかった」と主張したため、検察の言い分と食い違いが生じました。そのため、検察はAさんが証拠を隠滅する(証人などに接触を図り、証言の内容を変えさせる等)、逃亡するかもしれない(実刑もあり得るため)との名目で身体拘束を続けました。否認事件となると、保釈の認容が厳しくなり、本人、家族へ大きな負担となりますが、諦めずにタイミングを見計らって請求をかけることが必要です。