この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
依頼者と相手方は互いに隣同士の土地の所有者です。依頼者の土地は少し変わった形をしていて、相手方の土地との境界に沿って通路状の土地があり、その奥に四角い土地がありました。相手方の土地は角地で、直接道路に面しているのに、わざわざ依頼者の通路状の土地側に裏口を作り、長年に渡り、通路状の土地を無断使用し、依頼者が抗議しても聞き入れませんでした。依頼者は積年の恨みが溜まっており、過去にわたって土地の不正使用について通行料相当額の損害賠償請求をしたいと考えていました。
(1)調停の申立と不成立当初、依頼者が調停を強く希望したため、調停を申立てました。ところが、相手方が徹底的に争ったため、話し合いはまとまりませんでした。(2)訴訟の提起調停が不調により終了したため、訴訟を提起しました。相手方は、①通路の使用による通行地役権の時効取得と、②損害賠償請求権の時効消滅を主張しました。①については判例に基づき反論し、②については時効にかかっていない期間の賠償を得ることで依頼者は納得しました。(3)境界の争いところが、ここで相手方が更に問題を大きくしました。相手方は、通路状の土地の一部が自分の土地だと主張し、自分の土地しか通っていないから通行料は発生しないと言い出したのです。相手方の主張は、土地の公簿面積と過去の測量図面に基づくものでしたが、公簿面積は不正確なものも多く、それだけで土地の境界線が特定できるようなものではありません。(4)土地家屋調査士の起用相手方の主張がおかしいものであることは明らかなのですが、正面から反論してもただの言い合いになる可能性がありました。そうなれば、訴訟は長期化する可能性があるし、裁判官がどのような判断を下すのかは保証の限りではありません。そこで、専門家の目から見て相手方の主張が不当であることを明確にするため、境界調査の専門家である土地家屋調査士を起用し、意見書を書いてもらうことにしました。意見書には土地家屋調査士が測量した結果を記した現況測量図面も添付されました。もっとも、土地家屋調査士は、普段は測量や図面の作成を仕事にしており、意見書のような長い文章を書いたことはありません。意見書の作成にあたっては、私が編集作業を行い、土地家屋調査士の専門的意見を曲げないよう最大限の注意を払いながら、論理を整理し、文章をわかりやすくまとめ上げました。(5)和解の成立意見書を提出した結果、相手方が土地家屋測量士が作成した図面を元に境界を確定することを希望したため、和解が成立しました。和解に基づき通行料も支払われました。
土地家屋調査士との共同作業が上手くいったことで、境界の確定という、当初の目標より大きな結果を得ることができました。