この事例の依頼主
30代 女性
夫との性格の不一致等を理由に離婚を決意した妻から離婚の相談を受けて受任し、夫に離婚の意思を伝え、財産分与等を求める通知を出したが、夫側に就任した弁護士から、「財産は一切無い。預貯金もない。株式は、夫の能力で価値を増やしたものであって夫の固有財産であり、自宅不動産も老朽化が進み、ローン残の方が大きく無価値であるから分与するものは一切無い」などして財産分与を拒絶された。離婚を切り出す前の時点で、家の中にある、通帳、証券会社からの郵便物や株主総会通知や保険会社からの郵便物など、可能な限りの情報を得ておくよう教示していたが、財産は一切無いなどと嘘を付かれたため、本格的な財産調査に着手することとなった。
家庭裁判所に調停を申し立て、事前に把握していた銀行、郵便局に対する調査嘱託を掛けて、夫の取引履歴を入手し、その履歴の中に、保険料の支払いや公共料金、新聞、携帯電話等の支払い、給与の振り込み等、本来あるべきはずの取引履歴がない場合には、それらはどの口座を使っているのか釈明を求め,更に明らかになった金融機関の預貯金履歴を取り寄せるなどして、預貯金の内容を解明した。そして、取引履歴の中に、証券会社との取引履歴も認められたため、これが株式取引をしている証券会社であろうと判断し、同様に調査嘱託で履歴を開示したところ、多額の株式取引をしていたことが判明した。また、不動産の評価について争いになったため、不動産鑑定士に査定を依頼し、通常の不動産業者の無料査定よりも信用できる証拠資料を確保して調停に臨んだ結果、最終的には、不動産評価額は当方主張に近い金額、預貯金を含む財産全体の5割を妻に分与、株式については、夫の能力による貢献が高いものの、内助の功あってこその財産増殖であったとして株式は3割相当額を妻に分与するとの内容での調停案が裁判所から示され、調停成立に至り、約2000万円ほどの財産を手にすることができた。
妻側からの依頼を受けることが多いですが、家計を妻が全て管理して把握している場合には良いのですが、給与額を明かされていなかったり、財産の全容を把握していない場合には、弁護士会照会や裁判所の調査嘱託等の財産調査方法がありますので、これらの制度を駆使して財産内容を解明していく工夫が必要です。元検事で資産隠匿の捜査をしていましたので、これら調査のノウハウを有しています。もっとも、別居する前に、今現に家に同居している時点での調査が決定的に重要になることが多いので、是非、離婚について悩まれている場合には、お早めに弁護士にご相談ください。