この事例の依頼主
40代 男性
事故当時、被害者は建築作業員として勤務されていましたが、木造家屋の解体現場において家屋崩落に巻き込まれる事故に遭い、リスフラン関節脱臼、第5腰椎椎体骨折等の傷害を負われました。事故後、被害者は長期間の治療・リハビリを受けたものの、右下肢の足指や足関節に重篤な可動域制限が残存してしまいました。そこで、被害者は、雇主に補償を求めましたが、雇主からは十分な資力がないため、損害賠償には応じられないと言われたことから、当弁護士事務所に来所相談・依頼されました。
まず、当事務所は被害者の症状を確認し、右足指全て、足関節に相当な可動域制限が残存しており、椎体骨折部の変形も想定されたことから、労災年金を受給できる後遺障害7級が狙えるのではないかと見込みを立てました。そこで、当事務所は、主治医に正確な可動域の測定を依頼するとともに、画像所見やカルテ等の医学的所見を取り付け、労災への障害申請を行いました。その結果、被害者には、当方の見立て通り、右下肢及び足指の機能障害8級相当(足趾の全廃 9級15号、足関節機能障害10級11号)、脊柱の変形障害11級7号の併合7級の後遺障害が認められました。その後、当事務所は、認定された後遺障害を基に賠償金を積算した上で、示談交渉を開始しました。本件の一番の問題は、直接の雇用主に損害賠償を支払う資力がないことでした。関係書類を精査したところ、本件事故現場では、元請会社が現場の責任者として届けられており、下請会社の社員にも直接指示監督を行っている状況にありました。そこで、当事務所は、雇用主だけではなく、元請会社にも本件現場での安全配慮義務が認められると判断。双方に損害賠償請求を行いました。各種証拠を踏まえた交渉の結果、元請会社は安全配慮義務違反を認め、雇用主と併せて総額2039万円の損害賠償金を受け取ることが出来ました。
労働災害における損害賠償請求では、会社側が賠償責任保険に入っていないことが多く、支払能力のある当事者に賠償責任を問えるかが重要な問題となります。労働現場当事者の不法行為・安全配慮義務違反の有無は非常に難しい問題です。労働災害の損害賠償にお悩みの方は、労災問題に詳しい弁護士へのご相談をお勧めします。