この事例の依頼主
50代 男性
相談前の状況
飲食店の個人事業主が交通事故被害に遭い、運転手に対する損害賠償請求について受任した。ただ、正しく確定申告をしておらず、確定申告上の所得額はわずかな金額になっており、そのままでは休業損害(休業によって発生した損害・事故後から症状固定までの間の減収分)及び逸失利益(症状固定後の減収分)が実態に見合わない極めて少額なものになってしまう懸念があった。
解決への流れ
確定申告書上、売上額自体は概ね正しい申告をしているが、個人的な支出の多くを仕入経費として乗せて、所得がほとんど残らないようにして確定申告をしていた。ただ、本人としては、毎月概ねこれだけ手元に残っていたという明確な供述が可能な状態であり、また、家賃・保険等の固定費の支出は明確であり、その他の仕入れ原価は、一定の利益を出すために3割以内に抑えることを厳守していたとの供述をしているところ、飲食業界一般においてこのことは常識の範疇でもあることから、これらの事実関係を前提に所得を推定計算し、休業損害及び逸失利益を計算して請求し、結果、概ね実態に近い賠償額を得ることができた。
確定申告をきちんとしていないのは良くないことであり、裁判所でも確定申告書は重視されますが、実収入や実所得をある程度の蓋然性を持って立証し、あるいは、年齢・性別・学歴相当の平均的な給与額相当の収入を得ていたことの蓋然性を示すことができれば、実収入や実所得に近い額、あるいは賃金センサスから判明する平均賃金額に近い金額を前提に計算した休業損害や逸失利益を認めてもらえるケースもありますので、諦めずに専門家に相談して下さい。