この事例の依頼主
30代 男性
相談前の状況
相談者様は、マッチングアプリで知り合った女性と会って食事をした後、女性を自宅に誘い、そこでキスをしたり女性の胸を触るなどの行為に及んだところ、途中で女性から拒絶の意思を示されたため行為を中断し、女性は帰宅しました。後日、相手方女性が被害届を出したようで、警察から相談者様のもとに連絡があり、不同意わいせつ罪として捜査をすることになる旨を告げられた上、取調べのために警察署に出頭することを求められました。相談者様の認識としては、キスをしたりしている最中も特に女性が嫌がる様子などはなく、無理やりに行為に及んだということもなかったことから、被害届を出されたことに困惑し、弁護士への相談に至りました。
解決への流れ
ご依頼をいただいた後、まずは弁護士から警察に連絡をして取調べの日時を調整し、取調べ当日も弁護士が同行しました。取調べにおいて、相談者様は、あらかじめ弁護士と打ち合わせをしたとおりに、自らが認識している事実経緯の詳細を説明したうえで、相手方が性的関係を持つことに不同意であったとの認識はなかった旨を供述し、差し当たり逮捕は免れることができました。その後、検察官に事件が送致される運びとなり、相談者様としては色々と言い分はあったものの、明示的な同意を取っていなかったことや、互いに相応に泥酔していたことなどを踏まえ、相手方女性との示談交渉を図ることとしました。当初、相手方女性は、示談金として300万円を要求してきましたが、弁護士が粘り強く交渉をした結果、最終的に50万円で示談が成立し、刑事手続についても無事に不起訴となりました。
法改正により、令和5年7月13以降、不同意性交等罪と不同意わいせつ罪が新設され、従来の要件であった「暴行や脅迫」といった事実がなくとも、被害者が性的行為に同意していないことを加害者に伝えることが困難であったと認められる場合(法律上8つの類型のシチュエーションが定められています)には、犯罪が成立することとなりました。被疑者として捜査対象になってしまった場合には、客観的に見て不起訴になると見込まれるケースにおいても、万一起訴されてしまったときのことを想定して不安を覚え、多額の示談金を支払うことを心理的に余儀なくされるケースも多く、問題を孕んだ法改正であると思います。法律の内容の是非については割愛しますが、被疑者として捜査対象になってしまった方におかれては、事件当時の事実関係や証拠について弁護士とともに精査し、できる限り正確な刑事処分の見通しを立てた上で、示談をするかどうか、示談するとして上限額をいくらくらいに設定するかなどの方針をしっかり定めることが望ましいので、初動の段階でお早めに弁護士に相談をすることをお勧めします。