この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
相談者(40代女性・会社員)は、6年前に夫と離婚しお子様の親権を取得しました。離婚の際には市役所や友人からアドバイスを受けたため公正証書を作成していましたが、養育費の支払が滞ったため、当事務所にご相談をいただきました。
解決への流れ
一般論として、離婚の際に公正証書を作成するメリットは、分割の慰謝料や養育費といった長期的に約束されている支払について、支払いが滞った際に強制執行(きょうせいしっこう:預金や給与の差し押さえ)ができるところにあります。そのため、たとえば、慰謝料を一括で受け取る場合やお子様がおらず養育費がない場合には作成しなくて良い場面もあります。ご持参いただいた公正証書を拝見したところ、公正証書の内容に多数の不備がありました。当事務所にご相談いただく前に他の法律事務所にもご相談をされており、「この公正証書では強制執行できない」と依頼を断わられたということでした。依頼者様は弁護士に相談することなくご自身で公正証書の案文を作成し、公証役場に持ち込んだということでした。このケースでは養育費の支払いを受けるためにあらためて裁判を行い判決を取得しなければなりませんでした。実際には、裁判の途中で和解が成立し無事に養育費の支払が再開されましたが、適切な公正証書を作成していれば不要だった費用も多く掛かることになりました。
たしかに、公正証書の作成は弁護士に依頼せずとも行うことができます。しかしながら、公証役場は通常は当事者が持ち込んだ内容をそのまま公正証書にするだけであり、「内容が適切かどうか」・「強制執行をすることができるかどうか」ということには関与しません。離婚の際に公正証書を作ることは望ましいことです。もっとも、事案によっては敢えて公正証書を作る必要はないケースもあります。他方、養育費の支払がある場合には必ず公正証書を作成しておくべきですが、この事案のようにどんな内容でもよいというわけではございません。ご自身の離婚において公正証書を作成した方がよいかどうか、公正証書の作成を弁護士に依頼したいというご相談はとても多いです。あとから、「こんなつもりじゃなかった」ということにならないように、必ず弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。