この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談者Xさんのご尊父(以下、「被相続人」といいます)は、生前、相談者の妹Yと共同で本件マンションを購入(マンション価格の70%は被相続人負担)し、遺言を残してお亡くなりになりました。被相続人を相続したのは、Xさん、Yの2人で、遺言の内容は「①本件マンションの持分の全部を、Xさんの夫と子に贈与する」というものでした。Yは、この遺言によって、Xさんが相続財産を貰い過ぎだと感じました。法律的に言い換えると、Yのために保障されるべき財産の一定部分(遺留分)を侵害されたと感じ、遺留分の侵害分につき遺言の効力を失効させたいと考えました。そこで,本件遺言によってYの遺留分4分の1を侵害されたとして、遺留分の侵害分につき遺言の効力を失効させる請求(遺留分減殺請求)をYはXさんに対してしてきました。民法は、被相続人から特別の財産的利益を受けた者がある場合に相続人間で不公平が生じないようにするため、特別受益(民法903条)という制度を用意しています。特別受益制度とは、相続人が生前に受けた贈与が特別受益にあたると、その贈与の価格分が相続財産にプラスされ、その贈与を受けた人の相続分の中から贈与の価格分が引かれる、という制度です。一応の相続分(相続財産×法定相続分)からさきほどの贈与の価格分を引いた結果の額を相続人が相続していれば、遺留分減殺請求は認められないことになります。本件マンションの登記は被相続人10分の4、Y10分の6でされているのに対し被相続人はマンション価格の70%を負担したのですから、被相続人はマンション価格の30%分をYに生前に贈与したことになります。そこで、Xさんとしては,マンション購入価格の30%分が特別受益にあたると主張したいと考えました。問題は、マンションの購入代金の資金提供について、銀行の取引明細や通帳などの客観的証拠がなかったため、被相続人がマンション購入代金をYに生前贈与したことを立証することが難しかったことです。困ったXさんは当事務所に相談に訪れました。
弁護士鈴木謙太郎は、以下のように、被相続人がマンション購入代金の70%を提供したことの立証に成功しました。その結果、本件マンション価格の30%分がYの特別受益であり、Yの一応の相続分からその分を引いた額をYが相続していたため、Xの遺留分減殺請求は認められませんでした。被相続人がマンション価格の70%を提供したことの立証は、次のように行いました。すなわち、①被相続人とYが交わしたマンション購入相談メモから、Yが実際に用意できたのはマンション価格の30%であったこと、②Yが働いていた会社の給与水準からするとYがマンション価格の60%を用意できたとは考えられないこと、③被相続人の日誌や書付から、当時独身であったYの将来の生活の安定のことを考えて本件マンションの購入を決意したという被相続人の動機の3点から、経験則上被相続人がマンション価格の70%を提供したと考えるのが自然であるという形で立証しました。
相続において、相続額の争いは多く,立証の仕方次第で裁判官の判断は変わります。弁護士鈴木謙太郎には、本件のように、取引明細や通帳といった証拠がない難しい事案を解決した実績があります。相続でお悩みの方は、是非鈴木謙太郎にご連絡下さい。