この事例の依頼主
60代 男性
依頼者様夫婦は、子どもも独立され、長年勤務した会社から退職金が支給されたことから、ずっと憧れだった木造一戸建てを新築することにされました。依頼者様夫婦にとっては、木目の美しさが感じられる家で生活したいというご希望があり、また、依頼者様の奥様の呼吸器が弱かったことから、健康にとっても望ましいというお考えで、木造一戸建てをお選びになったのでした。依頼者様夫婦は、建築業者を長時間かけて選定し、良質の木に強いこだわりを持って木造一戸建てを建築しているある業者に建築を依頼することにされました。建築途中にはいくつかの些細なトラブルがあったものの、ようやく念願の木造一戸建てが完成しました。しかし、この新居に入居して間もなく、シロアリが大量発生しました。建築業者は、依頼者様宅のシロアリの発生状況を調査し、①シロアリの駆除剤を散布し、②シロアリ被害を受けた部材を切除し、③再度のシロアリ被害を防止するために塗料を塗りました。これらの作業については、どのような作業を行うかについて依頼者様に詳細な説明はなされておらず、依頼者様からの明確な承諾もありませんでした。これによって、次のような被害が発生しました。すなわち、①シロアリの駆除剤を散布した結果、依頼者様の奥様は涙と鼻水と咳が止まらない状態になってしまいました。②シロアリ被害を受けた部材を切除した結果、建物の強度・耐震性が脆弱になってしまいました。③再度のシロアリ被害を防止するために塗料を塗った結果、美しい木目は見えなくなってしまいました。依頼者様から、建築業者に対して、建物を元の状態に戻すこと、戻せないとしても、きちんとした補償をすることを求められましたが、満足な対応を受けることはできませんでした。
当職にて、依頼者様から、建築業者を被告とする裁判(訴訟)の委任を受けました。当職にて、シロアリの駆除剤について薬剤製造会社からの意見聴取、建物の強度・耐震性と建物の美観について一級建築士からの意見聴取を行い、準備を整えた上で、裁判(訴訟)を起こしました。また、裁判(訴訟)の中で、薬剤製造会社作成の意見書を証拠として提出し、一級建築士の証人尋問を行って建物の強度・耐震性と建物の美観について証言をしてもらい、依頼者様夫婦の当事者としての供述もしていただき、当方の立証を尽くしました。審理の最終段階で、裁判官から和解の打診がありました。打診された和解内容は、当方の主張が十分にくみ取られた内容で合理的な内容でした。依頼者様が早期解決を希望されており、和解内容も合理的であったことから、和解による終了となりました。
建築瑕疵による損害賠償を求める裁判(訴訟)であり、被告である建築業者が全面的に争ってきた裁判(訴訟)でした。依頼者様の費用負担についての制約がある中、薬剤製造会社や一級建築士と協力・連携して、建築瑕疵と損害についての立証を行いました。依頼者様は、多大な費用をかけて憧れの木造一戸建てを新築したにもかかわらず、入居してから間もない間に、シロアリ被害が発生し、その後の建築業者の不適切な対応によってすべて台無しにされてしまったという憤慨を持っておられました。しかし、裁判(訴訟)において、建築瑕疵の立証、損害の立証を行うことのハードルは低くはありませんでした。最終解決ができた後、依頼者様からは、「ようやく終の棲家ができたと喜んでいたら、踏んだり蹴ったりの状態となりました。業者が全く交渉に応じてくれず、泣き寝入りしないといけないのかと落ち込んでいましたが、いい解決をしていただき、もやもやした気持ちが晴れました。ありがとうございました。」との感謝のお言葉をいただきました。