この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
広告代理店に勤務していた男性(依頼者)で、日常的に職場に泊まらなければこなせない量の仕事をやらされていた。1ヶ月の労働時間は多いときで450時間を超えていた。タイムカードによる勤務時間の管理はなされていなかった。依頼者は時間外労働による割増賃金の支払い請求を求めたが、会社側は裁量労働制の協定を締結しており時間外労働時間は認められないと主張していた。仮に、時間外労働が認められたとしても、基本給の他に支給していた職務手当が見なし残業代としての性質を有することから、時間外労働に基づく割増賃金の支払い義務はないと回答していた。
解決への流れ
労働審判を申し立てた。裁量労働制の協定書については代表者の選定行為が無効であると主張した。時間外労働の立証について、依頼者は会社を出るとき、または、帰宅できず会社に泊まるとき、ほぼ毎回妻に対してメールを送信していたところ、そのメールを証拠として提出した。見なし残業代であるとの主張については上限時間の定めがなく、勤務時間の把握をしていないことから、無効であるとの主張をした。労働審判では、約430万円(遅延損害金含まず)の割増賃金の請求をしたところ、約50%の額での和解が成立した。
裁量労働制の協定、見なし残業代の規定があったとしても、それらが有効と認められるための要件を満たさなければ時間外労働として割増賃金を請求することが可能です。