犯罪・刑事事件の解決事例
#遺言

母が長男の遺留分を考慮した上で長女及び次女に遺産全部を相続させる遺言を作成した事例

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中村 傑 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人虎ノ門スクウェア法律事務所
所在地東京都 港区

この事例の依頼主

80代以上 女性

相談前の状況

母親から、何かと不合理な理由をつけて訴訟提起をする長男に対し、遺産を渡したくない、長女と次女に全ての遺産を渡したいとして、相談があった。母の遺産としては、①資産管理会社の株式、②自宅不動産、③預貯金があった。長女、次女、長男の法定相続分は3分の1、遺留分は6分の1である。

解決への流れ

基本的な対応として、長女と次女に、全ての財産を相続させる内容の遺言を作成することを勧めるとともに、遺留分対策が必要であることを伝えた。長男の遺留分は、法定相続分(3分の1)の半分である6分の1である。遺留分とは、遺言で相続分無しとしても、法定相続人、本件では子である長男が最低限相続できる割合分である。従って、母親が、遺産を全て長女及び次女に相続させるとする遺言を作成したとしても、長男は6分の1の相続分は確保できるのである。ただ、遺留分として長男に取得させる順序を遺言で指定することは可能である。そこで、母親に、遺産のうち、渡したくないものについて、優先順位をつけてもらうことにした。そうしたところ、①資産管理会社の株式、②自宅不動産、③預貯金の順番となった。ここで、問題となったのは、預貯金が今後目減りした場合、遺留分が、自宅不動産にまでかかってきてしまうのではないかということであった。更に聞き取りをしていくと、次女は、自宅不動産の取得を強く希望している一方で、賃貸戸建不動産を所有しており、この不動産については手放してもいいと考えていることが分かった。そこで、自宅不動産に遺留分がかからないようにする為、次女が所有している賃貸戸建不動産の敷地全部と母親が所有している自宅不動産の敷地の一部を等価で交換するとともに、次女が所有している賃貸戸建不動産の建物全部と母親が所有している自宅不動産の建物の一部をそれぞれ互いに売却し、代金の支払いを相殺した。すなわち、母親の財産と次女の財産を入れ替える形を取った。これにより、母親の財産は、①資産管理会社の株式、②自宅不動産の一部、③預貯金、④賃貸不動産となった。次女は、相続予定の自宅不動産の共有者となった。このような処理をした上で、母親は、①資産管理会社の株式は長女に、②自宅不動産の一部は次女に、③預貯金及び④賃貸不動産は、長女と次女に2分の1ずつ相続させるとする内容の遺言を作成するとともに、この遺言において、長男が遺留分を主張できる順番を、④③②①と指定した。これにより、自宅不動産は、長男による遺留分の主張があっても、次女が相続できることとなった。

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中村 傑 弁護士からのコメント

配偶者、子などの法定相続人は、遺留分(法定相続分の2分の1)があり、これは遺言によっても、侵害することが出来ない。すなわち、遺留分を侵害された法定相続人が望むのであれば、必ず、一部の財産は相続させなければならない。遺言によって、全く相続をさせないということはできない。そこで、次に考えることは、どの財産なら最低限相続させても構わないかということである。その順序については、遺言で指定することが出来る。遺言を作成するに際しては、この遺留分について考慮して、なるべく紛争が生じないよう対策を練る必要がある。