この事例の依頼主
70代 男性
相談者の母親が亡くなり、相続人の一人にすべてを相続させる旨の遺言がありました。相談者は遺産の一部である土地に建物を建てて住んでいました。兄弟仲が悪いため、遺言通りに相続が行われると、自宅の撤去等を迫られる危険があり、自宅を取られてしまうのは困るということで、相談に来られました。相談に来られた際は、他の相続人と感情的な対立が激しいこともあり、とにかく何とかしたいが、どうしたらよいかわからない、というような様子でした。
相談をお聞きし、すぐに遺留分減殺請求をすべきであると判断し、直ちに内容証明郵便で遺留分減殺請求を行いました。同様に遺留分減殺請求を行った他の相続人の代理人とも共同戦線を張り、まずは受遺者との交渉を行いました。しかし、受遺者側による預金の勝手な引き出し等の疑いもあり、共同戦線を張っていた他の相続人がその主張を強く行っていました。そのため、預金の引き出しの件も併せて解決するため、訴訟提起することになりました。訴訟では、遺留分減殺請求と預金の引き出しを理由とする金銭の返還請求について争われ、遺留分減殺請求は認容されて、不動産は共有となり、預金については遺留分について支払われました。不動産が共有となったため、相続登記を行い、共有物分割訴訟を提起したうえで、訴訟外での解決法を相続人の各代理人で何度も話し合いました。その結果、依頼者の自宅不動産部分だけ残して残りを売却し、売却代金を分配するということで和解に持ち込むことができました。売却に関しては、各相続人の利害が一致したため、各代理人が立ち合いのうえで不動産の内覧会を行い、できる限り高値で売却できるよう入札方式を取り、売却先を決定する手続きを行いました。売却にあたっては、放置自動車の処理問題が浮上したり、様々な障害がありましたが、各代理人が頭を絞って解決法を話し合い、一つ一つ解決していきました。その結果、最終的には非常に高値での売却ができ、依頼者は自宅土地建物を単独名義で確保したうえで、なお売却代金から現金も得ることができ、相続税等の支払いも滞りなく行うことができました。
相続人間の対立が激しく、また一方的な内容の遺言であったため、遺言自体の効力を争うことも考えられましたが、争うための材料が少なく、速やかに遺留分減殺請求を行うのが得策と判断しました。一つ一つの手続が遺留分減殺請求には1年という期間制限があり、被相続人死亡後の混乱状態の中で、行使できないまま時間が過ぎてしまいがちです。しかし、もし期間制限を徒過してしまえば、一切の権利を失ってしまい、取り返しのつかないことになってします。適切なタイミングで適切に遺留分減殺請求を行うことが大切です。また、遺留分減殺請求後、不動産が共有になっただけでは真の解決とは言えません。共有物分割訴訟を提起しつつも、共有物分割による各人不利益も考慮し、法律の専門家である弁護士同士が、それぞれが法的に妥当な結論を踏まえて折り合うポイントを見つけながら話し合いができるのも、相続問題で弁護士が関与するメリットです。相続後の手続は非常に複雑であり、ち密にスケジュールを組んでいても、今回の事案での放置自動車の問題のように規定路線から外れた出来事が起こったりもします。相手方も複数人おり、感情的な対立も激しい中、様々な検討項目を適切なタイミングで解決していかねばなりません。一人で悩むのではなく、とにかく相続問題に精通した弁護士にご相談ください。