この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
相談者は、夫と離婚協議中でしたが、離婚が成立する前に夫が死亡し、夫の遺産を相続するかどうかの判断を迫られることになりました。当時、夫の遺産がどの程度存在するかがはっきりしない状況であったため、相続放棄の可能性も含め、相続するとしてもどうしたらよいのかわからないということで相談に来られました。そこで、遺産調査と相続人調査を行ったうえ、相続放棄をしたほうが良いかどうかのアドバイスを行うとともに、相続する場合の遺産分割協議書の作成と、遺産分配の手続の代行等を弁護士が行うことになりました。
解決への流れ
まず、故人の関係者から遺物の引継ぎや聞き取りをした上で、弁護士会照会等を行い、遺産に関する情報を集め、相続はしたほうが良いとの結論に達しました。そのうえで、相続人となる相談者には、ほかの相続人として幼い子供が3名いたため、それぞれについて特別代理人の選任申立を行い、平等に法定相続分ずつ分配することになりました。そこで、特別代理人候補者を探したうえで3名の子について家庭裁判所に特別代理人選任の申立を行い、選任後、各特別代理人との間で遺産分割協議を行いました。そうしてまとまった遺産分割協議書に基づき、財産の分配を行いました。
本件では、相続人間の紛争性はない事案でしたが、遺産が不明である点、遺産分割協議にあたって特別代理人の選任が必要となる点が特殊であり、これらが解決しなければ遺産分割は不可能でした。また、銀行の預金解約のためにも遺産分割協議書の提出が求められるなど、相続財産を分配するまでのハードルは非常にたくさんあり、それぞれに専門的知見が必要です。このように、本件のように一見紛争性がない事案であっても乗り越えねばならない法的なハードルが多いという事態は、相続の場面ではよく起こり得ます。自己判断をせず、まずは法律の専門家でありあらゆる場面に対応できる弁護士に相談のうえ、任せるべきところは任せるという意識が大事ではないかと思います。