この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
裁判所で自分が監護者と認められたにもかかわらず、妻が子どもを引き渡さない。子の引き渡しの強制執行も申し立てたが、妻が子どもを連れて逃げ回っていて、実際に強制執行の場で、妻も子どもも姿がない。間接強制も認められたが、なおも相手は子どもの引き渡しに応じてくれない。相手方代理人からも説得はしてもらってはいたが、子どもの意思を尊重して様子をみながら引き渡すと言いつつ、いつまでも引き渡しは実現しない。
解決への流れ
審判で父親側が監護者と決まってから、すでに半年以上経過していたので、人身保護請求を申し立てた。裁判官からもかなり相手方を説得してもらったし、相手方代理人、国選代理人の協力のもと、任意での引き渡しが実現した。任意での引き渡しが実現したため、人身保護請求自体は取り下げた。
いくら審判で監護者と指定されても、実際に相手が引き渡してくれるかどうかはまた別問題です。任意で引き渡してくれなければ、子の引き渡しの強制執行を考えなければなりません。その子の引き渡しの強制執行も実際に子が執行の現場にいなければ、引き渡しの執行は不能になるのです。他の手段として間接強制を申し立てる方法は考えられます。間接強制というのは、子を引き渡すまで、一日金●万円を申立人に支払え、というものです。例えば、1日5万円と決まれば、1ヵ月だけでも相手方は150万円支払わなければなりませんので、任意で引き渡そうとする動機づけになる場合があります。それでも相手方に財産がなければ開き直る可能性もあるでしょう。こうした手段を使ってもなおも引き渡されない場合に、人身保護請求を考えていきます。保護請求の根拠は子の不当な拘束です。裁判所によって監護者として指定されたにもかかわらず、また子の引き渡しの強制執行や間接強制の手段をしても、なお子の引き渡しが実現されないとなれば、拘束の違法性が顕著だとして人身保護請求が認められる場合があるのです。また、拘束者(相手方)が裁判所の判断に従わない場合、拘束者(相手方)は勾留あるいは刑事罰が予定されていますので、かなり強力な手段と言えるでしょう。なお、人身保護請求は緊急性がありますので、裁判所もわれわれ弁護士も他の事件より優先します。普通では考えられないようなスピードで手続きが進んでいくのです。