この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
ご依頼者は,雇用期間の定めのある有期雇用(1年毎の更新の定めあり)の労働者であったところ,これまで複数回にわたり契約が更新されていました。そのため,今回も更新がされるものと思っていたところ,更新の時期になり,会社からいきなり一方的に「今回は更新しない」と言われました。ご依頼者は、更新されないと職を失って生活に困ってしまうため,会社に再度の更新を求めましたが,会社は結論を変えようとはしませんでした。
解決への流れ
ご依頼者としては,契約更新を望んでいたことから,違法な雇止めの無効を会社に認めさせ,会社に復帰することを目指し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴訟を提起しました。訴訟を進めるにつれ,会社側の更新に関する手続きの杜撰さが明らかになりました(雇止めをする必要性の検討不足,雇止めの人選が恣意的になされていたこと,更新をしないことの説明不足など)。そのため,会社側が今回の雇止めを撤回し,今回の契約は更新する方向での和解を検討することとなりました。ただし,会社側としては,今回と次回は更新する意向とのことだが,その間に更新手続きを見直す方針とのことで,次々回以降はどうなるかはわからないということでした。これを受け,ご依頼者として熟慮の末,金銭の支払による解決に方針を転換することにしました。この方針を受け,裁判所および会社側と協議し,依頼者の希望に沿うかたちで,①雇止めの手続きに至らない点があったことの確認,②会社がご依頼者に解決金1年分相当を支払う内容の勝訴的和解が成立し,解決に至りました。
訴訟提起の準備段階では,雇止めに関する判例を分析しつつ,更新の時期毎の契約書,更新時の資料(説明資料,やりとりをしたメール),ご依頼者の日記・メモなどの証拠をつぶさに検討し,雇止めの効力を判断するための要件・要素に該当するか否か等を丁寧に検討しました。思い返せば,この過程で訴訟の帰趨はほぼ決まっていたのかもしれません。この事案では,ご依頼者の当初の希望(会社への復帰)が叶う和解又は判決が獲得できる見込みであったが,訴訟を通じて,ご依頼者の考えが変わり,方針転換をすることとなりました。熟慮の末,方針転換をすることは決して悪いことではなく,むしろ合理的な選択と言えることも多く,その方が良い解決につながることもあります。この事案を通じ,柔軟な対応の必要性とともに,ご依頼者にとって最良の解決を目指すことの重要性を改めて感じさせられました。