この事例の依頼主
50代 女性
依頼者(妻)の夫は、結婚当時から会社員だったが、給与の額を全く明かさず、毎月わずかな額を生活費として渡すだけだった。このため依頼者もパートなどで生活費を捻出していた。子どももできて何年かした後、夫が突然、マンションを購入した。依頼者には、いくらで購入し、いくらのローンを組んだのかも言わなかった。ローンは基本的に夫が払っていたが、時々支払わずに督促がきたので、その時は依頼者が払っていた。その後、夫は何も言わずに会社を辞め、しばらく無職でいたが、別の会社に入った。この時も、妻である依頼者には何も言わなかった。そして、夫の父親が亡くなり土地を相続したので、その土地上に家(自宅)を建てた。この時の住宅ローンについても夫は何も教えなかった。この住宅ローンもマンションの時と同様、基本的には夫が払っていたが、しばしば督促が来るので、依頼者が生活費の中から払っていた。その家に引っ越してからしばらくしてマンションを売ったが、売却したことも、売却代金がいくらだったのか、それを何に使ったのかも全く教えて貰えなかった。その後、夫宛にいくつかの信販会社から借金返済の督促状が届くようになり、夫に借金があることが分かった。そこで、借金の額や理由を聞こうとしたが、夫は教えず、却って怒り出して暴力を振るうようになった。このため依頼者は離婚を決意して別居を始めた。
夫には借金があり返済が滞っている状態のなで、夫が預貯金を持っている可能性は少なく、財産分与の対象は家(建物)だけと思われた。ただ、これまでの夫の行動から、財産分与の話をしたら、家を売却し、売却代金を隠されてしまったり、借金返済に使われてしまったりすることが考えられた。それを防ぐために、先に家について保全処分として仮差押えをして勝手に売却できないようにして、それから調停の申立をした。調停の中で、夫も家を売却して売却代金を財産分与することに同意したため、調停と平行して売却の話を進め、離婚調停成立の直後の日を売却の決済の日とし、決済の場で売却代金の中から財産分与の金額を受け取った。
本件では、子どもも独立していたので、争いになるところは財産分与だけであり、依頼し波の今後の生活のために財産分与はしっかり確保する必要がありました。ただ、一般論として、財産分与の対象になる財産をお互いに全部明らかにしているかというと疑問符が付くこともしばしばあります。本件では家(不動産)そのものを隠すことはできませんが、それまでの夫の言動から、売却してお金にして隠すということが危ぶまれました。このため調停を申し立てる前に、仮処分をして勝手に売却できないようにして財産分与の対象財産を確保しました。