この事例の依頼主
30代 男性
相談前の状況
依頼者(夫)夫婦は、結婚前後の頃からいろいろな場面で考え方が違い、衝突することが多くなった。例えば、両家の顔合わせをどのような場所でどのように行うかから始まり、結婚式はどうするかでも揉めた。結婚後も、お金に関する考え方や子どもに対する考え方も違い、しばしば衝突した。依頼者は単身赴任も多かったために、単身赴任中は何とか過ごせたが、単身赴任が終わって同居すると、衝突を繰り返すということになった。そんな中、子どものことでまた衝突したため、依頼者はこれ以上夫婦生活を続けることは無理と考え、実家に帰ってしまい、別居生活が始まった。別居後、夫婦とそれぞれの親も交えて何回か話し合いが持たれたが、依頼者は離婚の意志が硬いものの、妻は離婚は絶対にしないと言って、話は進まなかった。
解決への流れ
依頼者の離婚の意志が硬いので、離婚に向けて調停の申立をした。調停においても依頼者は絶対に離婚するというのに対して、妻は子どものために絶対離婚はしないと言って、話が進まなかった。このため、調停は不調(話し合いがつかない)ということで終了させ、離婚訴訟を提起した。離婚訴訟の中で、双方から意見を書いた書面が出されたが、それを見ると、同じ一つの出来事についても依頼者の見方・考え方と妻の見方・考え方が全く違うことが明らかであった。このため、裁判の途中で裁判官が間に入って話し合いをすることにして、裁判官から妻を(円満な夫婦生活を続けることは無理だと)説得、最終的には妻も離婚に同意し、裁判中の話し合い(和解)で離婚が成立した。
協議離婚や調停離婚(調停とは、裁判所での話し合い)では、お互いに離婚について納得して離婚となるので、離婚の理由・原因は問題になりません。しかし、裁判での離婚は、一方が離婚に納得していなくても裁判所が離婚させるものなので、法律が定めた5つの理由(①不貞、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④強度の精神病、⑤その他夫婦生活を続けられない重大な事由)のどれかがなければ離婚は認められません。一般的に、性格の不一致はこの5つの理由のどれにも当てはまらないため、調停を行っても話がつかない場合に、裁判で離婚するのは難しいということになります。ただ、私の個人的な感じでは、最近の裁判官の感覚として、どちらかが絶対に離婚だといって(特に別居をしていて)円満な生活に戻るとは思えないような場合には、形式だけ夫婦として残すことはどちらにとってもよくないと考える傾向にあるのではないかと思います。このため、本件においても、双方の書面を見て、円満な夫婦生活の回復は無理だと考えた裁判官が説得をしたのだと思います。(ちなみに、本件での別居の期間は、裁判所での和解が成立した時点で2年余りでした。)