この事例の依頼主
30代
相談前の状況
相談内容建物(収益物件)を購入したが,建物の居住者の一部に問題があり,融資が下りなかった。契約条項に融資が拒絶された場合には契約を解除できると記載されているため,これに基づいて契約解除を主張し,既に支払った手付金の返還を求めている(解除通知は,①仲介業者への口頭での伝達 ②売主の自宅の郵便ポストに直接投函 ③売主の自宅への書留郵便の投函 の3回行った)が,売主は①,②については認識しておらず,③の通知のみ解除期限経過後に確認したので解除は有効では無いと主張し,返還に応じようとしない。
解決への流れ
受任後直ぐに受任通知を相手方に送付し,支払済みの手付金の返還を求める訴訟を提起。争点は①解除事由である融資の拒絶理由(買主が審査に協力しない等の理由であれば有効な解除理由にならない)②買主から行った解除通知の到達時期が何時かというものであった。結果としては当方の主張が殆ど全て容れられる形で和解を成立させることに成功。支払った金額も殆ど返還される形で事件を収束させることができた。
トラブルの多い不動産案件の中でも,非常に複雑な争点を抱える事案でした。売主の態度が誠実なものでなく,融資が拒絶された理由を依頼者のせいと主張したり,解除通知が到達したのが解除期限後だった等と虚偽の主張を繰り返していたのですが,融資担当者との会話の録音や,依頼者が売主に契約解除の意向を伝えて欲しいと仲介業者に告げている会話の録音,売主自宅ポストに直接解除通知を投函する様子等,証拠をしっかり準備していたので,最終的には当方の要望がほぼ全面的に認められる形で和解が成立しました。改めて,適切な証拠の準備が重要であることを再認識させられた事案でした。