犯罪・刑事事件の解決事例
#相続放棄 . #遺産分割

【遺産分割調停】誤って相続放棄を行なったが、その後の交渉・調停で不動産全部を取得できた事例

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翠川 洋 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人官澤綜合法律事務所
所在地宮城県 仙台市青葉区

この事例の依頼主

50代 女性

相談前の状況

約5年前に依頼者の父が亡くなりました。法定相続人は,依頼者のほか,母,弟の3人。依頼者と弟は,母に全部の遺産を相続させたいとのご意向でした。その際,「母が全ての遺産を取得する」という内容の遺産分割協議書を作成すればよかったものの,依頼者と弟は,知識がなかったことから,誤って家庭裁判所に相続放棄の手続をとってしまいました。相続放棄をした場合,はじめからその人は相続人ではなかった,という判断をされます。その結果,依頼者のご意向とは異なり,母のほか,父の兄弟姉妹やその甥・姪が新たに相続人の対象者となってしまいました。ただし,依頼者と弟が相続放棄を行なった後,不動産の名義変更の手続をしなかったため,前述のことには気づかないまま数年が経ちました。数年後,母が亡くなり,父名義のままとなっていた不動産を依頼者と弟の名義に変更する手続を行おうとしたところ,父の兄弟姉妹や甥・姪等が相続人の対象となっており,依頼者と弟のみでは名義変更が行えないことが発覚。依頼者は,家庭裁判所に,相続放棄の効果を誤って手続をとったため,相続放棄の無効を主張する申立も行いましたが,残念ながら認められませんでした。そこで,どのように対応すれば良いか…とご相談に来られました。

解決への流れ

相続放棄の効果自体を覆すのは困難である、考えられました。依頼者と弟以外の相続人は約10人。しかも,遠方に居住する人が多数居り,依頼者もにとって疎遠な方々も居ました。そこで,弁護士が,相続人全員宛に,今回の事情等を丁寧に説明した手紙を送付し,依頼者に相続分を譲渡していただけるようにお願いしました。その結果,10人中9人から,スムーズに相続分の譲渡を受けることに成功しました。しかし,1人からは,一切返事をもらうことができませんでした。その方は,依頼者も一度も面識がなく,連絡先も知らない方でした。そこで,相続分譲渡をいただけなかった1人を相手方として,遺産分割調停を起こしました。結果,相続分譲渡をいただけなかった相続人には多少の代償金を支払うことを条件とし,依頼者が唯一の遺産である不動産の全てを取得することが出来ました。

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翠川 洋 弁護士からのコメント

遺産分割の際に,「誰か一人に遺産全部を取得させたい」ということはよくありますが,その際,家庭裁判所の相続放棄という手続きをとると,必ずしも意図したように相続を実現できない場合も多くあるので,十分な注意が必要です。遺産分割を行う場合で,トラブル等がないケースでも,どのような手続きで進めるのが適切なのか,専門家である弁護士に相談した上で進めていくことがお勧めです。なお,今回のケースのように誤って相続放棄をしてしまった,という場合でも,弁護士に相談することで打開策が見つかる場合もあります。トラブルが拡大する前に,早めに相談されることが大切です。