この事例の依頼主
50代
相談前の状況
成年後見事件について、その成年後見申立ての理由の1つに当該被後見人が当事者となる遺産分割が問題になった案件がありました。このようなケースでは、選任される成年後見人が直接、法的な紛争である遺産分割協議に関わる必要があります。裁判所は、こういった場合、成年後見申立人が任意に選んだ人物を成年後見人とするのではなく、弁護士などの専門職を成年後見人に選びます。本件は、そういう理由で、当職が裁判所から専門職成年後見人として選出された案件でした。問題の相続財産については不動産のみがありましたが、被相続人の子の1人が被相続人の生前から長く同居して居住している物件でした。
解決への流れ
被後見人本人が財産処分について意思表示をできる状況ではなかったため、親族間に無用の対立をもたらさず、被後見人の利益も確保しつつ、かつ、成年後見事件の監督を行う家庭裁判所も反対しないような内容で解決に導く必要がありました。そのため、性急に遺産分割調停などを申し立てて無用の波乱を招くのではなく、根気強く交渉にあたりました。最終的に、関係者全員が納得し、かつ家庭裁判所からも異議のでない内容で合意に至り解決できました。
関係者全員が解決の方向性を、おそらく理性では分かってはいたが、最後の踏ん切りがなかなかつかない案件だったように思います。解決を急いで裁判所の手続を利用しようとした場合、被後見人の財産からさまざまな調査費用を支出する必要もあったでしょうし、遺産分割としての解決後に親族間に無用のしこりを残すおそれのある案件でした。他方で、成年後見人に選任したときの課題はどうなったのかと定期的に様子を聞いてくる家庭裁判所をなだめ必要のある案件でもありました。最終的に、関係者が納得できる解決にたどりつけたのは幸いでした。