この事例の依頼主
60代
相談前の状況
依頼者は60代男性で年金生活をしておりました。妻は50代・専業主婦で長男(一人っ子)が妻と同居していました。依頼者は妻と5年前から別居し、本人(依頼者)名義の自宅不動産には、妻と長男が居住していました。住宅ローンはありませんし、また、離婚自体には争いはありませんでした。妻は自宅不動産に居住継続するため単独取得を希望しましたが、不動産取得の代償金を支払うだけの経済的余力がなかった為、 そのため離婚条件に折り合いがつかず、当事務所に相談・依頼に来られました。
解決への流れ
当事務所が代理人として妻と協議し、離婚に伴う財産分与に代えて、自宅不動産を依頼者から長男に生前贈与することで、妻と長男の住居を確保することとしました。
離婚に伴う財産分与は、対象となる夫婦共有財産を折半するのが一般的ですが、夫婦間で合意ができれば必ずしも折半にする必要はありません。このケースでは、依頼者は無条件で妻に自宅不動産を取得させるのは抵抗がありましたが、依頼者自身はお金に困っておらず、依頼者が亡くなれば長男が全て相続すればよいと思っていました。他方で、妻側も住居が確保できれば名義にこだわらないようでした。そこで当事務所は、相続時精算課税制度を利用した相続対策もかねて、自宅不動産は長男に生前贈与した上で、妻と長男がそのまま居住し続ける解決案を提案しました。依頼者も妻も、子どもに財産を引き継ぐという点では異存がありませんでしたので、双方が納得する解決となりました。たとえ夫婦間では対立しても、子を想う父親・母親としては、同じ方向を向いて、今後も良好な関係を続けてほしいと願ったケースでした。