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#人身事故 . #慰謝料・損害賠償 . #後遺障害等級認定

【後遺障害等級11級】高齢の被害者について,家事従事者として休業損害,後遺障害逸失利益を獲得した事案

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大賀 一慶 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人ONE本社オフィス
所在地山口県 下関市

この事例の依頼主

70代 女性

相談前の状況

Aさんは,80代の女性で専業主婦として夫と二人暮らしをしていました。歩行中に自動車にひかれてしまい,手首の骨折を負いました。治療中に相談に来られました。Aさんは,痛みがまだあり,手首の動きも悪化したままであったにもかかわわらず,医師からもう治らないと判断され,後遺障害の等級認定手続へ進むこととなりました。しかし,適切な後遺障害が認められるのかどうか不安になり,相談にいらっしゃいました。依頼者の怪我の内容は,橈骨遠位端骨折と尺骨遠位端骨折というものでした。これらの部位を骨折した場合,手関節の機能障害が生じる可能性があります。事故前に比べて,手の動く範囲(可動範囲)が狭くなったという障害です。骨折等により機能障害の可能性がある場合,後遺障害診断書を作成してもらううえで重要なことは,機能障害の状況(可動域)を正確に計測してもらうことです。自賠責の等級認定実務では,関節ごとに正しい計測方法があります。この計測方法にしたがって,正確な可動域を記載してもらいます。よく5度単位や場合によっては10度単位でざっくりとした計測をする先生がいらっしゃいますが,それではいけません。1度単位で正確に計測をしていただく必要があります。今回のケースでは,可動域の測定を正確に実施していただくために,自賠責の等級認定実務において参考にされている計測方法が記載された書面を主治医に渡し,詳細な後遺障害診断書を作成していただくことができました。被害者請求の結果,自賠責保険会社から,両手について「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として,それぞれ12級6号の認定がなされ,両障害を併合して11級との判断がなされました。

解決への流れ

Aさんの手首の動きの悪化の原因を探るため,主治医と面談し医師の意見を聞きました。画像上でその原因を特定することができるとのことでしたので,画像の原因となる異常所見の箇所に矢印をつけてもらったり,その画像が何を意味しているのかについて意見書を作成してもらいました。また,医師に対して,手首の動きの悪化の理由とその根拠となる医療記録を後遺障害診断書に記載してもらようお願いするとともに,後遺障害診断書を作成する際に手首の動きの角度を測ることになりますが,1度単位で正確に計測して頂くようお願いをしました。その結果,内容の充実した後遺障害診断書が作成され,医師の意見書や異常箇所が特定されたMRI画像を取得することに成功しました。それらの資料に加え,カルテ等の医療記録一式,実況見分調書などを取得して後遺障害の認定手続へ申請を行いました。その結果,Aさんには11級相当の後遺障害が認められ,賠償金は(既払金分も含む。)約1200万円の賠償金を獲得することができました。交渉の中で特に争いとなったのが,休業損害と後遺障害逸失利益です。保険会社は,「Aさんが高齢であるから,家事をしていても若い世代に比べて,家事の内容は制限されていただろう。若い世代に支払う場合よりも減額すべきだ」と主張してきました。確かに保険会社の主張には一理あります。しかし,Aさんは全ての家事を一人の行っていました。そのため,AさんやAさんの夫の陳述書を作成して,減額は相当でないと反論しました。何度も交渉を重ね,休業損害と後遺障害逸失利益の発生については,保険会社に認めてもらうことができました。しかし,休業損害や後遺障害逸失利益の金額については,若干の減額された金額で合意するに至りました。高齢であることを理由に,休業損害や後遺障害逸失利益の算定の基礎となる基礎収入を減額することができるか,できる場合にはどの程度減額されるのかという問題です。これまでの裁判例とAさんの事案を比較検討すると,裁判への進んだとしても,若干の減額は避けられないという事案でした。したがって,裁判になればより減額されてしまうおそれも考慮して,若干の減額されることで合意することとしました。

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大賀 一慶 弁護士からのコメント

関節の機能障害が生じている事案では,医師によって関節のお可動域の計測方法やその正確さに差があります。事案によっては,角度が1度ずれてしまうだけで,賠償金額に数百万円の差が生じることもあります。そのため,後遺障害等級認定を受ける前の後遺障害診断を作成していただく段階で,いかに正確な計測をしてもらうかが極めて重要なポイントになります。またAさんのように,高齢の方に後遺障害が生じた場合,通常よりも賠償金が減額される可能性があることを十分に理解しないまま裁判へ進んでしまい交渉時よりも判決の方で大幅に減額されたということでは専門家として許されません。裁判をすべきか否か,どの程度で和解すべきかという点については,それまでの経験と類似の裁判例を複数調査することが必要不可欠です。慎重に文献を調査し,想定される結果を見極めることが被害者救済にとって重要であることは言うまでもありません。 Aさんには,満足して頂いたと考えております。