この事例の依頼主
男性
相談前の状況
とある子どもむけの美術教室で、児童の身体にわいせつ目的で触れたとして、その教室が開かれた半年後に逮捕された事件です。逮捕されたときから、依頼者は身に覚えがないとして無罪を主張していました。
解決への流れ
複数の弁護士で弁護団を組んで、警察署で依頼者との面会を重ね、詳しく事情を聞きました。その際、取調べへの対応も丁寧にアドバイスし、捜査状況を日記につけるようにしました。美術教室の関係者からの事情聴取や証拠収集も速やかに行いました。もっとも、身柄の解放を求める申し立ては、裁判所も受け入れてくれませんでした。はじめから無罪を主張していたこともあってか、検察官は、被害を訴えた児童の供述のみを拠り所として、起訴(裁判にかけること)の決定をしました。そこで、公判前整理手続を申し立て、裁判が開かれる前に、検察側の所持する証拠を開示させたり、弁護側が提出する証拠の整理をしたりしました。その間に保釈を申し立て、ようやく依頼者の身柄を解放することができました。その後の裁判(美術教室の関係者らや参加者、担当警察官の尋問などをやりました)を経て、無事に無罪を勝ち取ることができました。その美術教室には保護者を含む多数の参加者がいて、およそわいせつ行為などできる状況ではなかったこと、子どもに楽しんでもらうためにお遊戯的な要素が散りばめられたプログラムで、その過程で身体の接触があってもやむを得ない状況であったことなどを明らかにできたことが、勝訴に結びついたと思います。
なかなか身柄が解放されない中で依頼者の心も限界にきており、保釈が認められた際には依頼者は本当にほっとした様子で、私も心から安堵しました。その後も気を抜かずに依頼者や関係者との打ち合わせを重ね、裁判の戦略を練り、尋問の準備を行い、無罪という最良の結果を得られたことは、大変うれしく思います。今回の事件では、捜査機関側が美術教室の実際の様子をきちんと調べることを怠り、児童の供述が事情聴取の中で変化していることに目を向けなかったために、誤った起訴がなされてしまったのだろうと感じます。現場の様子を調べることの重要性を痛感した事件でした。