この事例の依頼主
20代 男性
相談前の状況
依頼者様は成人したての男性で、通勤途中にある家にあった、前から欲しいと思っていた高価なロードバイクを盗んでしまいました。後日、そのロードバイクに乗っているところを警察に職務質問され、盗んだものであると発覚しました。ただ、ご家族がいたこと、しっかりした仕事をしていたことから、逮捕まではされずに任意に捜査に協力する形が取られました(在宅事件といいますして、逮捕されてはいませんが刑事事件として扱われることに変わりはありません)。相談に御一緒された御両親は、仕事のことや将来のことを考えると絶対に不起訴にして欲しいが、どのように被害者に謝罪したらよいか自信が持てず、弁護士に依頼することを決めたそうです。
解決への流れ
在宅事件で多い相談です。被害者は当然お怒りですから、加害者が謝罪に行くとかえって感情的になりがちです。「なぜこの事件を起こしたのか」という根本的な問題を見抜けていないと、被害者は許してはくれません。弁護士は、多くの被疑者と接する中でそれを見抜く能力を身に着けているので、間に入って冷静な協議ができます。この事件でも、担当検事に連絡して必要十分な事件内容を聞き、両親や関係者からは普段の様子を、本人からは言い分を聞きました。そうすると、この事件の背景となった事情が浮かび上がってきました。それをきちんと把握し、それに対する今後の対応策についてご家族と話し合いながら、被害者とも少しずつ話を進めていきました。こちらの真剣みが被害者に伝わり、やがて被害者の中に許す気持ちが芽生え、ロードバイクを当初の購入価格で買い取るという内容で示談に応じていただきました。その後、検察官は不起訴処分としました。
法律云々の前に、やはりやったことを正直に認めて、素直に謝るというのが、一番大事なことだと思います。もちろん、自分がやっていないことまでは認める必要はないし、相手にも落ち度があるときは、それを隠す必要もありません。ただ、加害者が自分の行いと誠実に向き合っていることは、伝えなければなりません。これが正しい形で被害者側に伝われば、多くの被害者は納得してくれます。ただ、言葉にするのは簡単ですが、実際にこれをやるのは難しいものです。特に、加害者やそのご家族は、パニックとまではいかないまでも、様々な根拠のない情報に踊らされ、冷静な判断ができなくなっています。その状況で何をやっても裏目に出てしまいます。そこをサポートするのが、在宅事件の弁護士の仕事だと思います。