この事例の依頼主
30代 男性
コンビニの駐車場で、犯人から一方的に理不尽な因縁をつけられ、殴る蹴るの暴行を受けました。店員の通報を受けた警察がかけつけ、犯人を逮捕し、その後事件は検察庁に送検されました。でも検事の話では、犯人は全然反省していないそうです。むしろ自分の方が先に因縁をつけたというような言い訳をしているらしいです。また、暴行のことも、酒に酔っていて覚えていないと言っているようです。裁判では、犯人の言い分が信用されないようにしたいです。それに、きちんと謝罪して欲しいし、怪我もひどくて20回くらいは通院しましたから、治療費や慰謝料も支払って欲しいと思います。とにかく、この理不尽な思いを裁判にぶつけて、納得して終わりたいです。
確かに、加害者の言い分が依頼者様や目撃者の話と大きく食い違っており、被害者として裁判を見届けたいという気持ちがよくわかりました。また、その場で検察官に連絡してどんな事件かを簡単に聞くと、やはり検察官も、加害者はかなり粗悪な人間だという印象を抱いていました。我が国では、被害者も、加害者の刑事裁判に独自の立場で参加することが認められています。そこで、私が被害者側の弁護士として刑事裁判に参加し、犯人に質問したり、求刑意見を述べたりといった活動をしました。被害者自身も参加を望まれたので、私が聴取した被害感情を訴える原稿は、彼自身に音読してもらいました。これらの活動により、犯人も裁判の中では言い訳らしい言い訳をしませんでした。その結果、事件の内容にふさわしい判決が出ました。他方で、治療費や慰謝料といった賠償金については、別に民事訴訟をやると時間がかかるので、その刑事裁判を利用して支払を命じてもらう「損害賠償命令」制度を使いました。結果、賠償金も満額支払われました。依頼者様にご感想を聞いたところ「裁判で加害者と顔を合わせると嫌な気持ちになったし、認め事件の裁判ということで時間も90分で終わってしまい、本音としては心残りな部分もあった。ただ、判決がきちんとした内容になっていたことと、賠償金を得られたことで、裁判に参加してよかったと思えた。」とのことでした。
被害者は、事情聴取のときに検察官から刑事裁判に参加できる制度があることを教わったそうです。私が弁護士会の犯罪被害者支援委員だったので、ご相談に来られたとのことでした。被害者からすれば、理不尽な傷害を受けたり、捜査協力や通院で時間をとられたり職場に迷惑をかけたり、トラウマになって眠れなくなったりと、踏んだり蹴ったりな状況です。これを少しでも軽減するのが、被害者側弁護士の役割です。私は法的なところしかケアできませんが、上記委員会のネットワークを用いることで、心のケアや生活の立て直し等の援助制度にもスムーズにつなげることもできます。加害者の弁護もする弁護士が、被害者のための活動もするのは、一貫していないじゃないか、と思われるかもしれませんね。しかし、被害者の傷が浅く済むこと、被害者の立ち直りを後押しすることは、被害者だけでなく、加害者にとっても、そして何より社会にとって、絶対に良いことのはずです。そういうポリシーで犯罪被害者支援委員会に所属しています。被害者の弁護士費用は、一定の要件さえ満たせば国の援助が受けられます(この事例でも援助が認められました)。この要件はあまり厳しくないので、犯罪被害者の多くが援助を受けられるはずです。こういった参加によって、精神的な苦痛が和らげられる面もあると思いますし、参加の形は色んなパターンがあります。お悩みの方は、ご連絡ください。