この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
30歳代の市役所職員が異動後の慣れない職務内容と長時間労働によって自死(自殺)されたため、ご遺族(妻)がご自身で公務災害認定請求をされましたが、過労自殺であることが認められず、公務外認定(不支給決定)を受けてしまい、審査請求(不服申立て)の手続をしておられました。この段階で相談を受け、逆転認定を目指して受任することになりました。
解決への流れ
依頼を受け、ご遺族や同僚の方々から、職務の内容や職場の状況、亡くなる前の様子などについて事情をお聴きし、精神科医にうつ病発症の有無やその時期について医学的な意見を求めるなど、公務災害認定に向けた再調査を行い、それを主張書面にまとめ、審査請求、再審査請求に対応しましたが、いずれも不支給決定であったため、神戸地方裁判所に訴訟提起しました。訴訟でも、改めて、職務内容や長時間労働の実態、亡くなるまでの様子などを詳細に主張し、国側の主張に対しても詳細な反論を行った結果、逆転認定の勝訴判決を勝ち取ることができ、ご遺族に対しては、遺族補償年金が、これまで支給されていなかった過去分も含めて、支給される結果となりました。
うつ病等の精神障害を原因とする労災、公務災害(過労自殺)の認定請求にあたっては、業務内容や職場の環境、時間外労働時間の調査など、精神障害を発症するに至るまでにどのような出来事があったのか、そして、その出来事がどの程度の精神的負荷のかかるものであったのか、を調査し、それを整理して主張するとともに、いつ、どのような精神障害を発症したのか、その原因は何か、についても、医学的な知見を踏まえて主張していく必要があります。これらの調査は多岐多方面にわたり、労力のかかるものではありますが、労災認定、公務災害認定を勝ち取るためには、このような事実の積み重ねと分析が必要不可欠であり、そのためには、過労死・過労自殺事件に関する専門的な知識や経験が必要となります。私自身、弁護士登録の当初から、過労死・過労自殺の研究会に所属し、これまで多数の事件に取り組んできており、この分野の事件には非常に思い入れがあります。一生懸命に働いた結果、体調を崩したり、死亡したりするに至ったご本人やご遺族に寄り添いながら、ご本人に原因があったのではなく仕事が原因であったということを明らかにし、今後の生活の補償の糧を得ることを目指し、尽力していきます。