犯罪・刑事事件の解決事例
#遺産分割 . #相続登記・名義変更

取得時効を認める判決を得たことで、多数の相続人の方との困難な遺産分割協議を回避することができ、早期かつ労力のかからない形で、自宅を相続できた例

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徳田 暁 弁護士が解決
所属事務所法律事務所インテグリティ
所在地神奈川県 横浜市中区

この事例の依頼主

70代

相談前の状況

夫が亡くなったので、自宅を相続して名義を自分に変更したいということで、奥様からの相談がありました。ところが、自宅には、20年以上も前に亡くなった、夫の前妻の持分が、名義変更されないまま残ったままでした。夫と前妻との間には子どもがおらず、親も亡くなっているため、前妻の持分は夫だけでなく、前妻の兄弟にも相続されていることとなります。しかし、戸籍を調べたところ、前妻には、たくさんのご兄弟がおられ、中には亡くなっている方もいて、代襲相続人である甥姪も含めると20人近くの相続人がいることが判明しました。自分の親族ならばいざ知らず、全く面識のない前妻の親族と遺産分割協議を行うことへの不安、ましてや、多数に上る相続人の方の全員から、自分が自宅を相続して名義を自分に変更することの同意を得ることは難しいのではないかという心配から、途方に暮れて相談にいらっしゃったことを覚えています。

解決への流れ

方針を検討したところ、確かに、普通に遺産分割協議をすることで解決することは困難であり、判子代だけではすまない可能性も予想されました。しかし、前妻が亡くなった当時、夫が前妻の持分を分割せずに、自宅全体を自分が相続したものとして住み続けることに異議を唱えた前妻の相続人の方はいませんでした。また、夫が亡くなった後も、ご相談者である奥様が、平穏かつ公然と自宅全体を占有し、使用し続けており、前妻が亡くなってから20年以上が経過していました。そこで、いわゆる取得時効が完成していると考えられましたので、前妻の相続人の方に対し、その旨をお伝えするとともに、自宅の登記名義を変更するため訴訟提起を行うこと、ついては、裁判所から訴状等が届くが驚かないで欲しいこと、訴状の内容に異議がない場合には裁判の期日には出席しなくてもかまわないことを事前に連絡した上で、取得時効を理由として、自宅の所有権移転登記手続き請求訴訟を提起することにしたのです。そうしたところ、相続人の方は、全員、相談者である奥様が自宅を引き継ぐことに納得されて裁判には出席せず、いわゆる欠席判決により、自宅の所有名義を奥様にすることが認められました。

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徳田 暁 弁護士からのコメント

判決による登記名義の変更であれば、相続人の方全員の同意を得る必要はありません。そこで、ちょっとしたアイディアで、法律構成を工夫することにより、相談者の方にとっても、相続人の方にとっても、早期かつ労力のかからない方法で、解決ができた例です。この点、本件においては、欠席判決とはいえ、相続による自主占有の開始を前提に、共同相続人の1人が、遺産全体を時効取得することを認めるという法律的な面で珍しい判決がでましたが、その後の登記申請手続上も、このとき手続きを申請した法務局では、①占有開始と相続開始が同日である場合の時効取得の判決による登記につき、法定相続登記を経ずに、直接判決による移転登記が認められた点(この方法の方が登記申請件数は減少し、ご相談者の費用負担は減少します。)、②前妻の相続人だけでなく、前妻の登記義務を承継する夫の相続人全員も登記義務者となるとされた点において、希少な先例になるようです。