犯罪・刑事事件の解決事例
#遺産分割

被相続人の生前中に同居する共同相続人が被相続人名義の預金を多額に引き下ろしていた事件

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笠井 收 弁護士が解決
所属事務所笠井・金田法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

60代 女性

相談前の状況

被相続人は80歳代後半の父親、共同相続人は長男Aと長女B、遺産は自宅土地建物と約2800万円の預貯金であったが、預貯金が被相続人の死亡前約10か月前から毎月、50万~200万円がキャッシュカード等で引き下ろされていた。Bは遺産分割調停を申立て、Aに対し、引き下ろした金員は被相続人の意思に基づかず、恣に引き下ろされたものであるから、遺産に戻すこと、仮に費消してしまった場合は、特別受益として同額分、Aの相続分から差し引かれるべきことを主張。これに対しAは引き下ろしは被相続人の意思に基ずくもので、使途は被相続人の医療費、生活費に充当した旨主張。

解決への流れ

家裁は預金の引下しにつき、地裁の判断を仰ぐよう指示。Bは一旦、遺産分割調停申立を取下げ、地裁にて被相続人のAに対する不当利得返還請求権を相続したものとして、Aに対し、引き下ろした金員の返還請求訴訟を提起した。証拠調べの結果、当時、被相続人は中程度の認知症の症状を呈していたこと、高齢である被相続人の生活費は月額10万円程度で足りること、医療費の領収書を提示できなかったこと、仮に医療費がかかったとしても月額50万円~200万円は多額に過ぎるとの心証から地裁は引き下した金額の8割をAの不当利得金として、Bに支払い、改めて、その余の遺産に合算して法定相続分に近い金額での遺産分割の和解を成立させた。

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笠井 收 弁護士からのコメント

被相続人の生前中、同人と同居するなどしていた共同相続人の1人が、同人名義の預貯金を恣に引下ろしたり、預貯金の存在を開示しない事例が多くなっている。このような事例の場合、預貯金がいずれの金融機関にあるのか口座が特定できれば、引下しの適否は比較的容易に立証できるが預貯金の存否、及びいずれの金融機関にあるか開示されない場合、その調査は容易ではない。遺産分割調停を申立て、家裁による強い説得等により開示させるしか有効な手段は思いつかないが、共同相続人は被相続人が健在のうちから、どこの金融機関と取引があるか、聞いておく必要がある。