この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
下請従業員が元請けを訴えた、労災事件による損害賠償請求訴訟を控訴審から担当したことがあった。1審は元請け会社が敗訴していた。事故があったこと自体は争いはなかったが、本当に元請側に責任があるのか、はっきりしない事故だった。
解決への流れ
そもそも、元請に責任があるのか、不明確であったため、その元請け、下請の構造を法的観点から、すべて洗い直すことにした。また、事故現場にもたびたび行き、事故状況を再現することも行った。厚生労働省にも、当時、そのような事故が発生しないよう指導などをしていたか否かも問い合わせた(その際は、厚労省は、事故当時は、そのような指導はしていなかった、との回答を受けた)。そのような観点から主張を行ったところ、控訴審で和解勧告がなされ、1審が命じた支払額の半額以下で和解ができた。
業務中の事故に対し、裁判所は労働者よりに判断する恐れが高いと考えている。もちろん、労災補償・労災保険はきちんと支払われるべきであるが、さらなる責任を使用者が負うべきか否かについては、冷静に審理がなされる必要がある。その点を特に重視して、主張を行った。和解解決後、独立する前にその会社の代表者とお話をするときがあったが、その際、この事件のことを引き合いに出され、これだけの書面が書ける腕があるんだから、頑張ってやってほしい、と言われたことは今でも覚えている。