この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
定年退職した社員から、会社ビルの朝の開錠作業を指示されて毎日のように早朝出勤し、そこから始業までずっと会社ビル内で電話番などをさせられていたと主張し、その分の時間外手当を遡って請求する訴訟を提起されました。これは私が企業側でお手伝いさせて頂いた事案です。
解決への流れ
和解で終わりました。請求金額(付加金抜き)の4分の1ほどで和解が出来ましたので、まずまずのところご希望には添えたと思います。
法律上の「労働時間」とは「労働者が使用者の指揮監督の下にあったと客観的に評価できる時間」なので、指示された開錠作業を行い、さらにその後も始業まで社屋内で電話番をせざる得ない状況にあったならば、それも「労働時間」となり得るのです。そうであれば、そうであれば,その始業前の時間は「時間外労働」ですから、1.25倍の割増賃金の支払い対象となり得るのです。正直,相談を受けた時点では、訴えを提起してきた元社員さん(原告)の側に分があるように思えました。しかし、詳しく事情を聴いて行くと、開錠作業自体はあっという間に終わり、それを終えた後は特に何をする必要もないためにかなりの自由があり、電話番と言っても順次他の社員が出社してきて負担が分散するので、その全てが法律上の労働時間とは言えないということが分かってきました。そこで、「割増賃金の対象となるのは、開錠作業とその後のごく一部の時間帯だけだ」ということを、裁判所に対して、調査結果を示しつつ、詳しく主張立証しました。その結果、裁判官が上記の和解を提案し、これで双方妥結に至りました。