この事例の依頼主
女性
相談前の状況
依頼者は、勤務先で、解雇と思われる発言をされたことで、労働基準監督署に相談した後、自ら交渉をしていました。依頼者は、当初自分自身で、交渉をしていたものの、使用者側の代理人として就任した弁護士が、解雇ではなく合意解約を求める一方で、時間外労働の未払賃金を支払わないという回答がなされたため、交渉による解決が出来ず、当事務所に相談にいらっしゃいました。
解決への流れ
相談を受けた弁護士が、早期解決の手段として労働審判を勧めました。弁護士が、依頼者に対し、労働審判の委任契約書等を渡した後、使用者が解雇を実施したこともあり、当初予定していた未払賃金の請求に加え、地位確認及び賃金支払を求めて、労働審判を申立てました。答弁書では、解雇理由の主張がされるほか、労働時間を記載した労働者作成のメモの信用性を争ってきた他、既払金がある旨の主張がなされていました。労働審判期日において、請求していた残業代を一部控除されたものの、解雇については有効にならないという労働委員会の心証開示もあり、初回の労働審判において、解決金の形で137万円の支払を受ける一方で、使用者都合による退職をする形で調停が成立しました。受任から和解成立まで約2か月でした。
使用者が、契約書も就業規則もタイムカードも作成をしていなかった事案です。使用者が機械的に記録をつけられるタイムカードを導入していたら解決内容がかわった可能性があります。依頼者が働いている途中から独自に出退勤時間のメモを定期的につけていたという事前準備がポイントとなりました。使用者は答弁書で一定の残業代の計算をしていましたが、労働審判での審問で、労働者のメモから一定時間を機械的に控除した旨の発言がなされていて、使用者が時間管理を行っていないことが明らかになりました。使用者が、業務上法令を知ってるべき分野の違法行為もあったためか、使用者にはやや厳しめのトーンで労働審判官が話されていたことが印象的でした。和解に際しては、残業代の請求のベースは労働者作成のメモをベースにすることができたものの、賞与と異なる時期、かつ、賞与と異なる名称で支払いのあった部分について、一定の控除がなされ、これに解雇無効の心証を前提に給料相当分を加算した数字による解決となりました。