この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
被相続人が亡くなった後,相続人Yが,全遺産をYが相続する内容の公正証書遺言を他の相続人に開示しました。相談者は遺言書に疑義(遺言書作成時に被相続人に判断能力がなかった)があると感じ当事務所に相談にきました。
解決への流れ
Yと交渉をしましたが,遺言書を有効性を前提とする協議にしか応じませんでした。よって,民事訴訟を提起しました。裁判で①遺言公正証書は複雑な内容で被相続人には理解しがたいこと,②被相続人は遺言書作成時90歳を超えていたこと,③要介護4と認定されていたこと等の事実を指摘し,公正証書遺言作成時に被相続人に判断能力がなかったことを主張しました。また,裁判手続の中で遺言書作成時に遺言者が呼吸器をつけていたことが明らかになりました。呼吸器をつける状況下では公証人に遺言内容を口授することはできないとも主張し,最終的に勝訴と同様内容,つまり,公正証書遺言が無効である前提での和解ができました。特に本件では,金融機関に対して遺言書の有効性に疑義があることを指摘した結果,金融機関が遺言書に基づく払戻しを拒否し,財産の保全にも成功しました。
遺言公正証書は公証人の面前で作成されていることから,それを無効にすることは極めて難しいといえます。しかし,本件では,証拠を積み重ね,最終的に遺言無効の判断を得ることができました。依頼者が被相続人が入院していた病院や介護施設を覚えており,有益な証拠を多く収集できたことが事件解決に繋がりました。