この事例の依頼主
70代 男性
三人兄弟の二男の方からの相談。父親が亡くなり、銀行預金と不動産とである程度まとまった金額の遺産があるが、父親死亡直後から長男が他の兄弟に何の相談もなく単独で不動産の管理を開始し、相談者はまったく利用できない状況で、銀行預金も兄弟全員の同意なしでは払い戻しできない。相続税の申告、納付の期限も迫っており、どうしたらよいかとのことでした。
まず、父親の遺言書が父親が住んでいた家にある金庫に入っているはずとのことでしたので、取り急ぎ遺言書を相談者のもとに確保してもらい、家庭裁判所で検認の手続きをしました。同時に、預金のある銀行三行に連絡を取ったところ、やはり相続人全員の同意なしでは払い戻し不可とのことでしたので、三行の銀行それぞれに対して、相談者の方の法定相続分の払い戻しを求める訴えを提起しました。すぐに各銀行から連絡があり、法定相続分を直ちに支払うので訴えを取り下げてほしいとのこと。相談者の方の口座に各銀行から法定相続分の金額が振り込まれたのを確認して、訴えは取下げました。次に、遺言書はあるものの内容に不明確な点があり、また長男の方は、当分遺産は分割せず共有のままにしておきたいとの一点張りで、遺産分割協議のできる状況ではなかったので、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをしました。しかし、調停が始まっても長男の方の気持ちは変わらず、調停成立の見込みがなかったため、家庭裁判所に対し早期に遺産分割審判に移行してほしい旨の意見書を提出。移行した遺産分割審判では、遺言書に遺産はすべて兄弟三人の共有と書かれていたことから、遺産である不動産はすべて三人の兄弟の共有で、持分は各三分の一とするとの決定がなされました。ただちに、地方裁判所に共有物分割の訴えを起こしたところ、現物分割は難しいケースであったので、競売によりその売却代金を持分に応じて分配するという判決がなされました。当該判決にもとづき、遺産である不動産の競売手続を進めたところ、心配していたような競売減価の影響を受けた低い価格ではなく、ほぼ市場価格で第三者に競落され、無事相談者にも持分に応じた配当がなされ、一件落着となりました。
遺産分割について、相続人間での協議、調停成立の見込みがないと判断された場合は、家庭裁判所に早期に審判に移行してもらうことにより、結果的に相続人間の争いを早く収束させることができる場合があります。