この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
ご依頼者様は,雇われ店長として,飲食店を運営されていました。経営が苦しくなり,オーナー(株主)から事業を終了させるように迫られましたが,ご依頼者様は,これまで自分が育ててきたブランドを守るため,会社を引き継ぐ形で独立したいと考えておられました。ところが,女性であることもあってか,オーナーからは,威圧的な対応をされ,非常に困惑しておられました。
解決への流れ
当事務所が,ご依頼者様の代理人となり,オーナー(株主)と事業承継についての交渉を行うこととなりました。その結果,ご依頼者様が,オーナーと直接やりとりをすることなく,事業を譲り受けることができました。オーナーは,同じ法人格で別の事業も行っていましたので,形式としては,飲食店事業の事業譲渡となりました。経営が苦しい中での事業譲渡のため,日々の売上や売掛金の入金を予測して,お互いにとって不測の事態がないように,詳細な事業譲渡契約書を作成しました。
事業の規模もそこまで大きくはなく,オーナーも事業を辞めたいと思っていた状況でしたので,合理的な話し合いができれば,事業譲渡はうまくいくはずの案件でした。しかし,オーナーと依頼主の関係が悪かったために,こじれてしまったものと推測します。弁護士が代理人になることで,合理的な交渉ができました。一般論として,事業譲渡などのM&A案件では,仲介会社とは別に,ご依頼者様の利益を第一に考えることができる顧問弁護士等の立場の者が必要だと思います。選択肢としては、M&Aを行うか,行わないかという選択肢があり,ご依頼者様の利益のためにM&Aを行うべきではないという助言をするべき場合があるからです。成約により報酬が発生する仲介会社などの立場の方から,M&Aを行うべきではないという助言を受けることができるでしょうか。今回のご依頼者様は,事業を引き継ぐという強い意志を有しておられ,事業そのものにも価値がありました。現在も繁華街でこの飲食店を経営しておられますので,弁護士としても事業譲渡をお手伝いできて,うれしく思います。