この事例の依頼主
50代 男性
ご相談者様は、自宅にてデリバリーヘルスを利用していた際、女性キャストの会話を本人に無断で録音していたところ、途中で女性が気づいて強く抗議。「盗聴されている」との主張とともに、店舗スタッフをその場に呼ぶ事態となりました。間もなく到着したスタッフは、「盗聴は犯罪だ」「今すぐ示談金として50万円支払え」「嫌なら警察に行く」と強い口調で迫り、その場の空気に押されるかたちで、ご相談者様は言われるがままに示談の意思を表明し、書類に署名までしてしまいました。しかし後日冷静になってから内容を見直したところ、その示談書は店舗側の署名しかなく、女性本人の同意が一切確認できない内容だったため、法的に有効なのかどうか疑問を感じ、弁護士にご相談されました。
ご相談者様の録音行為については、まず法律上の位置づけを確認しました。日本の刑法や関連法規に「盗聴罪」という犯罪は存在しておらず、そのため本件の録音行為自体が刑事犯罪に該当するものではありません。特に、録音が行われた場所がご相談者様の自宅であり、ご相談者様自身も会話に参加していたことから、刑事責任が認められる可能性は極めて低いと判断しました。もし仮に他人の住居や許可なく立ち入った場所で録音や盗撮が行われた場合は、住居侵入罪など別の犯罪に問われる可能性がありますが、本件ではそのような要素はありませんでした。一方で、録音された女性側が精神的苦痛を訴え、民事上の損害賠償請求の可能性は残されていました。また、ご相談者様は家族や職場にこの件が知られることを避けたいとの強い希望を持たれていたため、示談交渉による解決を目指しました。交渉の過程では、最初に提示されていた50万円という請求額が過大であること、録音行為が犯罪行為ではないことを法的根拠をもって丁寧に説明し、ご相談者様の誠実な謝罪の意思を伝えました。結果として、女性キャストと店舗責任者を含めた三者間で10万円の示談金による正式な示談が成立し、双方の署名・押印をもって今後の一切の請求や接触を行わないこと、情報を外部に漏らさないことを約束する合意がなされました。
日本の刑法や関連法規には「盗聴罪」という犯罪は存在しません。そのため、無断で会話を録音した行為が直ちに刑事犯罪となるわけではありません。特に、録音者が当事者であり、録音が自宅で行われた場合には刑事責任が問われる可能性は非常に低いのが現状です。ただし、倫理的・社会的な観点からはプライバシー権侵害などの問題があり、相手方が精神的苦痛を訴えれば民事上の損害賠償請求がなされる可能性は否定できません。今回のケースでも、録音行為が「犯罪」ではないことを明確にしつつも、示談によって円満解決を図ることが一つの適切な対応でした。初期段階での示談書が店舗側の署名のみであったため、法的効力に疑問が残る状態でしたが、最終的に女性本人と店舗責任者の署名も得た正式な三者間示談が成立したことで、今後のトラブルを未然に防ぐことができました。法的な誤解や不安から過剰な支払いや不利益を被ることのないよう、問題発生時には速やかに専門家に相談することが重要です。正確な法的知識と冷静な対応が、合理的な解決へとつながります。