この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
3人の子を持つ遺言者からの相談です(配偶者は既に死去)。預貯金,不動産など相当の財産をお持ちでしたが,財産の種類ごとや割合を決めて相続させたいというご意向ではなく,これまでの関与の度合いや現在世話になっている状況なども考慮しつつ順位を定めて,誰にいくら誰にいくらと,子に相続させたり,その他の方に遺贈したりしたい,というご意向をお持ちの方でした。また,既に相当の生前贈与などもされていて,ご自身の死後に,遺留分減殺請求などの争いすら起きて欲しくない,という気持ちも持っておられました。
解決への流れ
遺言者の複雑な思いを整理し,解釈が分かれる余地が生じないように明確に条文化し,相続開始時の財産を換価し,換価後の金銭が0になるまで,優先順に,相続させ,また,遺贈するという内容の遺言書を作成しました。付言において,いつ,誰に,いくらの生前贈与をしたかを明確に記載することによって,遺留分算定の基礎となる遺産額の計算がしやすくなるようにしました。また,全ての条項について,そのように定めた理由・思いを付言に明示しました。
財産の種類ごとにこの預金はAに,別の預金はBに,という内容や,ABCに3分の1ずつ相続させる,という内容の一般的な遺言書とは異なりました。そこで,相続開始時に現時点と同額の財産があると仮定した場合の,遺言執行シミュレーション表を作成しました。その際,生前贈与額も加算した,遺留分算定の基礎となる遺産額も算出し,遺留分権利者各自の遺留分額も明示しました。これにより,遺言者は,最終的に,誰がいくら受領できそうかを予測でき,また,遺留分侵害とならず遺留分減殺請求の問題にならないことも予測でき,肩の荷が下りたと非常に喜んでいただきました。公証人もこのようなスタイルの遺言書はあまり作成したことがないと話していましたが,このシミュレーション表を公証人にも見せ,文案どおりの遺言書が作成されました。