この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
相談者の元に、ある日突然、身に覚えのない書面が届きました。相談者の父親が滞納していた税金の支払いを請求するものでした。相談者のご両親は相談者が幼い時に離婚しており、相談者は母親と暮らすことになり、それ以来父親とは連絡を取っていませんでしたが、相談者の父親が半年前にお亡くなりになり、父親が生前に滞納していた税金の請求が、相続人である相談者の元に届いたのです。相談者は書面が届くまで父親が亡くなったことを知りませんでした。相談者は、父親が残した負債を相続人として支払わなければならないのかということでご相談にいらっしゃいました。
解決への流れ
相談者は相続放棄をすることとしました。相続放棄の申述は、お亡くなりになられた方(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行わなければなりません。また、相続放棄の申述に必要な被相続人の戸籍は被相続人の本籍地の市町村役場で取得する必要があります。被相続人の本籍地及び最後の住所地はいずれも遠方であったため、必要な戸籍等を郵送で取り寄せ、相続放棄の申述の申立も郵送で行いました。相談者が早急に相談に来られたこともあって、相談者が父親が亡くなったことを知ってから2週間程で相続放棄の申述の申立を行を行うことができ、申立から約2週間程で相続放棄の申述が受理されました。
相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3箇月以内に」しなければならないとされています。相談者は、父親がお亡くなりになった半年後に、書面で「自己のために相続の開始があったことを知った」ことになるので、相続放棄の申述期間内でした。もっとも、申述期間の3ヶ月は長いようで短く、戸籍等の取得に手間取っているうちにあっという間に期間が過ぎてしまったなどということにもなりかねません。特に、被相続人の本籍地が遠方の場合は戸籍等の取得に時間を要しますし、また、被相続人の親や兄弟が相続放棄をする場合は、取得する戸籍も多くなります。申述期間内に確実に相続放棄をするためにも、弁護士に依頼することが望ましいと思われます。なお、相続放棄は、被相続人に負債があると判明している時だけでなく、後から負債があることが判明すると困るので安全のために相続放棄をされる方や、被相続人と疎遠だったことなどを理由に相続手続きに関わりたくなくて相続放棄をされる方もおり、その理由は様々です。もっとも、相続放棄をした場合には、負債だけでなくプラスの財産も相続することはできませんし、相続放棄は一旦受理されると撤回はできませんので、注意が必要です。