この事例の依頼主
40代 男性
ご相談者様は、ほとんど毎日残業をさせられていたのに課長だから管理職であるとして、残業代を全くもらえていませんでした。会社では、従業員にタイムカードで出勤退勤時間を管理していたが、管理職は、タイムカードを押さないという制度でした。ただ、ご相談者様は、自分の手帳に毎日どれくらい残業していたかをメモしていました。しかし、会社では、過労死にならないよう残業時間を減らす、また、効率性のために一つのプロジェクトに長時間かけないようにしていこうなどと言っていたため、本来の業務時間量より短めに会社に申告しており、手帳のメモとプロジェクトの業務時間に齟齬も生じていました。
私は、残業時間を証明するものとして客観的な証拠がないため、労働審判や訴訟では不利になりかねないと思い、示談交渉でまとめるのが最も良いと考えました。そこで、内容証明を送付し、会社がつけた代理人と協議をすることにしました。会社は、残業代請求をされたのが初めてであり、訴訟などは回避したいという考えを持っていました。そのため、私は、たとえ手帳のメモなどだけであっても、本人の人間性の真面目さやほかの従業員の証人尋問等にてその真実性を最後まで戦い抜くつもりであるなどと会社代理人に伝え、訴訟になった場合の会社の負担の大きさ、影響の大きさなどをしっかり説明していきました。手帳に基づく残業時間から割り出した残業代は630万円ほどでした。交渉の初めの段階では、遅延損害金等も全額請求するような形にしながら、その後、遅延損害金部分は20万円ほどだけでいいから、650万円で譲歩しますなどと会社代理人に伝えていきました。会社代理人も、最終的には650万円に納得し、会社が650万円の解決金を支払うことで示談が成立しました。
会社に代理人がついた後も、なかなか会社側から主張が来ず、催促しても、反応がなかったため、示談は難しいかななどと思いました。客観的な証拠がないため、労働審判にて解決を図ろうかと思い、労働審判申立書を完成させ、裁判所に提出しようかと思ったその時に会社代理人から連絡が来ました。そのため、私は、すでに労働審判申立するところだったことなど、ご相談者様が最後まで戦う決意があることなどを話し、示談で解決するには相応の金額を払わなければならないことなどを丁寧に説明していきました。会社代理人も、訴訟回避という気持ちがあったため、650万円という金額に承諾してくれました。内心、訴訟になって勝てるのかなどと思っていたので、示談にてこちらの満足いく金額がもらえてほっとしました。