この事例の依頼主
男性
相談前の状況
妻が不貞行為(不倫)の相手と結婚したいと言い出し,それまで夫婦生活は円満であったにもかかわらず,突然,妻が弁護士を立てて離婚をしたいと言ってきたので反対したら離婚調停を申立てられたがどうしたらよいかという内容のご主人からの相談でした。
解決への流れ
調停では,ご主人に離婚の意思が無いことを伝えたが,次第にご主人の気持ちも変わり離婚に応じることになりましたが,離婚の条件として妻に対して慰謝料と財産分与割合の譲歩を求めました。これに対し,妻は弁護士を通じ低額の慰謝料の支払いと,原則どおり50%の割合での財産分与を求めてきました。しかし,私は,考えうる全ての手段を用いて粘り強い交渉を行ったところ,ご主人がほぼ裁判基準での慰謝料と自宅不動産(土地・建物)を全部取得し,他の財産の財産分与割合も35%まで低くするという条件に妻が同意し,調停が成立しました。妻に非があるとはいえ,ご主人に相当有利な条件での調停成立であったため大変喜ばれておりました。
離婚に伴う財産分与は,婚姻期間中に夫婦で築いた財産(共有財産)を清算するということを主な目的として行われるものですので,離婚につきどちらに落ち度があるかということとは関係なく共有財産を50%ずつ分け合うということが原則的な取扱いとされます(例外的に,財産形成への寄与度により修正されることもあります)。しかし,不貞行為(不倫)に関する慰謝料の支払いや離婚後の生活保障などの目的を含めて分与の割合を決めることは少なくありません。本件では,ほぼ裁判基準の金額での慰謝料を獲得できたうえ,さらに財産分与においても,自宅不動産の全ての獲得に加え,慰謝料的な目的を含む当方にかなり有利な分与割合(35%)での解決ができました。相手方に弁護士がついている事案でここまで当方に有利な条件での財産分与の合意がされることは稀ですので,本件は大きな成功事例であったといえます。法律的な原則論のみにとらわれない適切な解決を目指すことの大切さと可能性を感じた事例でした。