この事例の依頼主
30代 男性
相談前の状況
履歴書にも問題がなく,面接でもやる気のある態度でしたので,従業員を採用しました。働かせてみると,コミュニケーションが極端に苦手で,業務上の報告・連絡ができません。あまりにも業務に支障がでるので,業務上の報告・連絡をきちんとしてくれないと困るということを言いました。多少,厳しい言い方になってしまった部分もありますが,業務に支障がでてしまうので,改善して欲しいという気持ちで言いましたが,パワーハラスメントと受け取られてしまったようでした。その従業員は,だんだん出勤しなくなり,辞めるということになり,仕方がなく受け入れましたが,少し後に,労働組合から連絡がきました。解雇無効,パワーハラスメントの慰謝料請求,解雇するなら解雇予告手当を払えなどと主張していました。私の会社は小さな会社ですから,労働組合と交渉などとてもできませんので,弁護士さんに相談することになりました。
解決への流れ
当初は,こちらとしては,一方的に辞めた従業員が不当な請求をしていると感じていました。しかし,よくよく考えてみると,会社にも落ち度はあったと思いますし,強く注意するのも最近は気を付けなければなりません。コミュニケーションが苦手な従業員でしたから,精神的にダメージを受けた部分もあったかもしれません。和解で解決しました。和解の内容は,賃金の約2か月分プラスアルファの金額を会社が支払うというのが主な内容でした。会社としては,労働組合との交渉などできませんし,ましてや訴訟で争うなんて全く望んでいませんでしたから,和解の内容には納得しています。
会社を退職した従業員が,パワーハラスメントにあった,不当な退職勧奨により退職を強要されたとして,会社を辞めてから労働組合に加入し,団体交渉を要求してくるということは,珍しくありません。労働組合との団体交渉は法的に認められた方法ですが,中には交渉態度が荒々しい労働組合もあり,経営者の方が身構えてしまうこともあります。団体交渉は法に従って行われますから,多少交渉態度が荒々しくても,一線を超えることはほとんどありません。もっとも,団体交渉には,会社の代表者,担当取締役等が出席しなければならないことも多く,事業に支障が生じることもあります。有効な方法としては,弁護士が労働組合と電話や面接をして事前交渉(予備交渉)をして,ある程度の争点整理をする。争いのポイントを書面で明確化しておく。会社側が委縮しないように,弁護士が団体交渉の場所,時間,人数など,団体交渉のやり方についても,事前に協議しておく。可能であれば,弁護士が労働組合と和解をしてしまう。これらが行われれば,経営者の負担は相当減ります。経営者の方で,話し合いを得意としている方が,交渉を開始してしまう場合がありますが,団体交渉のルールというものがありますので,法律をしらないで交渉を開始すると,思わぬ落とし穴にはまることがありますから,お勧めできません。弁護士に相談して,労働組合との和解を目指すことをお勧めします。訴訟になる場合でも,当初から弁護士が関わっていた方が,有利に展開できる場合が多いと思います。