この事例の依頼主
60代 男性
私が所有する土地とそれに隣接するA土地は,併せて1つの住宅敷地を構成していて,その敷地場に,私が所有する建物が建てられています。ところが,A土地は,相当以前に亡くなられたBさんの名義のままとなっていて,Bさんの相続人は現在では10数名にのぼります。私としては,A土地の所有名義人を現状のまま放置すれば,時間の経過とともに法定相続人の拡散が進み収拾不能となる一方で,現実の問題として本件土地を管理する者がいなくなり,荒廃化が進んで近隣住民にも迷惑を及ぼすことを危惧しています。そのため,なんとかしてA土地を私所有名義に変更しておく必要があると思っているのですが,どのように対応したらよいのでしょうか。
弁護士に相談したところ,A土地を私が時効取得したという主張に関しては,「所有の意思」を持っていたと認められない可能性が高く,難しいことが分かりました。そこで,弁護士に他の方法により解決する手段を考えてもらい,まずはBさんのすべての相続人の方との間で,A土地の持分を譲渡してもらうよう働きかけました。多くのBさんの相続人の方にはすんなり譲渡していただけることとなったのですが,数名の相続人の方には難色を示されたので,それらの方に対しては一定の代償金を支払うこととなりました。もっとも,Bさんの相続人の方達には遠方に在住している方も多く,また海外在住の方も数名いらしたので,A土地の持分の移転登記手続のために私の依頼する司法書士がその方々全員と面談することなど到底不可能でした。そこで,Bさんの相続人の方達全員に対し事前に訴訟を提起せざるを得ないことについてのお詫びをお伝えした上で,Bさんの相続人の方達全員を相手取って訴訟提起し,なんとか判決をもらった上で,A土地全部の所有権を確保することができました。
訴訟を提起したとしてもなかなか土地などの「取得時効」は認めてもらえないという部分,所有権などの移転登記手続は登記義務者と登記権利者の共同申請が必要なのが原則でその場合には司法書士さんが登記義務者にも面談しなければならないという部分の2つがネックになる事件だったのですが,1つずつ問題を解決していってなんとか難題をクリアできた事例となります。