この事例の依頼主
50代 男性
辺りが真っ暗闇であった深夜、信号機のある交差点で、青信号に従って交差点に進入した軽自動車が、左から走行してきた大型トラックと衝突しました。軽自動車に乗っていた依頼者は、頭や足の骨を折る重傷です。依頼者は直ちに救急車で運ばれ、2ヶ月もの間、入院することとなりました。しかし入院後、いくら待っても加害者からの謝罪はおろか、相手方保険会社から入院費用の支払いさえしてもらえませんでした。どうなっているのかと警察に問い合わせると、なんと加害者は「自分が青信号だった。相手が赤信号を無視したのだ」と主張していることが判明したのです。退院後、ある弁護士に依頼して示談交渉を行いましたが、どうも依頼した弁護士自信が依頼者の言っていること(「こちらが青信号だったのだ!」)を信じてくれていないようです。納得がいかない依頼者は、弁護士を変えて裁判をすることにしました。
相談を受けた当職は、依頼者・加害者の双方が自分が青信号に従って交差点に進入したのだと主張しているため、示談は困難であると考え、裁判をすることにしました。こちらからは800万円近くの損害賠償請求をしました。すると、相手方からも、本件事故は依頼者の信号無視に原因があるとして、500万円の反訴請求がなされました(相手方からも500万円の損害賠償請求をされたということです)。訴訟では10回近くの期日に加え、約6時間にも及ぶ当事者尋問・証人尋問が行われました。そして加害者の当事者尋問で、真っ暗闇であったにもかかわらず、加害者が補助信号を見落としていた事実が発覚したのです。その後、判決では、補助信号を見落とすほどの前方不注視であったのだから、対面信号を100メートル以上前から見ていたという加害者の主張には信用性がないということで、全面的に依頼者の主張が認められました。双方が青信号の主張だと、過失割合は、100%か0%のどちらかです。800万円の請求金額全額が認められるか、一銭も認められず500万円の支払いを命じられるか、全く異なります。本件では、無事に当方の主張が全面的に認められることができました。
目撃者などがいない場合に、加害者の赤信号無視を立証することは非常に困難です。しかしながら、すべての信号が青色となる交差点などあり得ません。つまりは、依頼者を信じれば、加害者がウソを言っていることは確実なのです。このため、依頼者を心から信じ、代理人として依頼者(被害者)から事故当日の話を何度も何度も繰り返し聞き、事故現場にも足を運び、事故のイメージを頭に叩き込んだことが、加害者の主張の矛盾を指摘できたことにつながりました。信じて話を何度も聞くこと、また事故現場に足を運んだことが事件解決の重要なポイントとなったものです。改めて、依頼者を信じて仕事をしてよかったと思えた事件でした。