犯罪・刑事事件の解決事例
#遺産分割

被相続人財産の私的流用を疑われた方からの依頼で、全部勝訴

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島田 敬介 弁護士が解決
所属事務所島田敬介法律事務所
所在地東京都 中央区

この事例の依頼主

60代 女性

相談前の状況

被相続人であるお母さんの看護を一番熱心にされていたご相談者が、お母さんが亡くなられた後、実の兄弟から、お母さんの財産を(生前)着服した・私的に使い込んだなどとして総額700万円ほどの請求を受け、訴訟を提起された事案です(訴訟としは、不当利得返還請求訴訟という類型でした)。当職の受任前に別の弁護士さんに依頼されていましたが、訴訟の途中(すでに終盤にさしかかるような局面でした)で当職が委任を受け、訴訟対応を引き継ぎました。同様の事案は、比較的よくあるケースといってもよく、訴訟で争われる場合も少なくありません。このようなケースでは、(被相続人が認知症状を発症している場合)生前の被相続人の意思・判断能力が重要な争点となることが多いのですが、前任の弁護士さんは、この点に関する議論(お母さんの判断能力に特段の問題はなく、周囲の人間が使い込みができるような状況にはなかったとの主張)を一切されておらず(お母さんの預金等から引き出されたお金の使途などの主張にのみ注力されているようでした)、そのために訴訟の流れもかなり不利な状況に追い込まれていたといっても良かったと思います。

解決への流れ

そこで、当職受任後、すぐに被相続人の判断能力に関する主張を展開し、同時に(文書送付嘱託という手続を利用して)当時お母さんが通われていた病院のカルテ等を取り寄せ、事実を丁寧に拾うとともに、認知症に関する医学文献も広く調査し、証拠提出することで、当時のお母さんの意思・判断能力に問題はなかったことを主張立証していきました。その結果、当職の受任からも2年近く訴訟(第一審)が係属しておりましたが、(主にお母さんの判断能力に問題はなかったとの判断を理由として)相手方の主張を完全に退け、全部勝訴したという事案でした。その後、相手方は控訴、上告までしておりますが、いずれも退けられ、当職依頼者が勝訴した第一審が支持されました。また、この件では、第一審の判決間近の段階で、(分割未了であった依頼者のお父さんの遺産を含め)遺産分割調停が申し立てられ、調停係属中に上記の裁判の結果が出たため、依頼者が不利益を受けることなく無事遺産分割も終えることができました(不動産があったため、依頼者も4000万円近くの配分を受けました)。

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島田 敬介 弁護士からのコメント

上記のとおり、類似の事案は、我々弁護士も時々ご相談を受けることのある事案です。やや法律上の難しい話にはなりますが、裁判は「主張・立証責任」という重要なルールを中心に回っていくものであり、これをきちんと意識していないと有効な主張立証を展開することはできません。この事案についていえば、依頼者がお母さんの預金を引き出した事実を認めた上で、「お母さんのために使用した」という主張を中心に展開した場合、被告側(依頼者側)がそのことを全て立証する(例えば、レシートなどを全て提出する)責任を負ってしまいます。同種の事案では、被告側の方が被相続人に付き添って預金を下ろしたり、代わりに銀行に行ったり、その上で日常の買い物を手伝ってあげたりすることが多々あると思いますが、高齢者の日常介護をされている方が、細かい領収書などを全て保管しておくというのは困難です(後から、このような争いになるとは思いもしないわけですから)。このような主張立証責任も十分に理解した上で、当職としては、被相続人の判断能力を中心に主張を展開し、受任時の悪い流れを変え、全部勝訴の結果を得ることができました。当職は比較的裁判は得意にしているという意識がありますが、上記の主張立証責任はもちろんのこと、裁判所(裁判官)が多くの場合どのような思考回路を辿り、どのような事実認定の手法を採るのか、こういったことをしっかりと理解・把握することで良い結果を得られやすくなると考えております。また、このように裁判の結果を可能な限り正確に予想することで、裁判外(裁判となる前)の交渉事件も有利に運ぶことができます。