この事例の依頼主
20代 男性
相談前の状況
飲食店チェーン店でアルバイト中、床で滑って転び手を骨折した男性の相談を受け、会社に対して安全配慮義務違反を根拠に損害賠償請求をしました。店では調理係もホール係もギリギリの人員で切り盛りしており、客の催促が相次ぐ中で男性は急いで料理を運ぼうとした末の転倒でした。男性は労災認定を受け、14級の後遺障害(局部に神経症状を残すもの)が認められていました。
解決への流れ
男性の事情を聞き取り、休業損害と通院慰謝料、後遺障害慰謝料を足し上げて会社に対する請求額を算定しました。男性が早期の解決を求めていたことから、当初、スピード解決ができる可能性のある労働審判を申し立てました。しかし会社側が徹底抗戦の構えをとったことから24条終了となり、通常の訴訟に移行しました。争点は会社の落ち度の有無でした。訴訟で会社側は①安全教育ビデオを配備し、従業員にも見せていた②滑りにくい安全靴を貸与していたと主張して過失ゼロを主張しました。これに対して当方は、事故の原因として①人件費を圧縮するために、繁忙時間帯も従業員の配置をギリギリまで少なく抑えていた②厨房と客席の間に10センチほどの段差があり、厨房と客席を移動する従業員は構造的に足元を救われやすい状況にあった③床には水やスープの残り汁が絶えずこぼれていたが、繁忙時間中には拭き掃除をする余裕も与えられなかった、と主張しました。最終的に、裁判所の勧告もあって150万円で和解をすることにしました。
飲食店の労災事故のナンバー1は転倒です。転倒は、従業員の自己責任では決してありません。店の床や厨房台の構造や、店の繁忙度に比べてアルバイトやパートが少ないこと、さらに十分な安全教育の欠如といった、使用者の責任に負うべきケースが多いのが実態です。本件で、使用者の賠償責任を認める裁判上の和解が成立したのは、至極当然のことだと感じました。