この事例の依頼主
20代 女性
相談者は結婚数年目の20代後半の女性です。夫婦共働きのため保育園に通う子どもを双方分担して監護していましたが,生活のすれ違いや監護方針の違いから夫婦関係が段々悪化していき,一緒にいると口論が絶えなくなりました。そのため,相談者はやむなく夫が家にいる時間は仕事に出かけたり長時間滞在できる店で時間を過ごしたりするようにしていたところ,夫は相談者が別の男性と交際しているのではないかという疑いを持つようになりました。このことでますます夫婦間の対立は深まり,双方離婚の話をするようになりましたが,親権を巡って意見が合わず,膠着状態が続いていました。夫婦間の対立が激しくなって数か月経った頃,子どもにも少なからぬ影響が出始めたため,相談者はこれ以上同居して夫婦間の争いを子どもに見せるわけにはいかないと考え,子どもを連れて別居を決行しましたが,その後に夫から子どもの引渡しや監護者指定の審判が申立てられ、弁護士に相談に至りました。
まずは子どもに関する事件の解決に取り掛かりました。同居時に夫が保育園の送迎や日常監護に積極的に関与していたことから共同監護に近い状態ではありましたが,別居後相談者が単独で子どもを問題なく監護できていることや子どもが自分の生活は母親と一緒にするものだという認識を持っていることが調査官調査で報告されたり,別居は交際相手との同居が目的であるという夫側の推測に基づく主張を退けたりしたこともあり,夫側からの申立てを取り下げさせることに成功しました。別居後夫から婚姻費用の支払いがなかったことから,相談者から申し立てて並行して行われていた婚姻費用の請求も認められ,手続きの途中から婚姻費用も受け取れるようになりました。次に離婚に向けた協議を開始しましたが,子どもに関する事件の途中から週に1度の面会交流を行っていたことから夫の気持ちも少し収まってきたこと、夫側の有責配偶者の主張が認められず婚姻費用が算定表の上限額で決められて夫の負担となっていたこともあり、別居から1年ほどで最終的な解決を図ることができました。
子どもの監護権が問題となる場合には,もはや当事者間での解決を図っていくことは困難です。本件では,監護権を決める早い段階から弁護士に依頼があったため,主張の取捨選択を適切に行いつつ,子どもの監護権を奪われずに済みました。また,面会交流を行うにしても,子の監護権が対立している場合には,面会交流の方法についても冷静にアドバイスをしてくれる専門家が必要です。後悔する結論にならないよう,早めに弁護士に相談されることをお勧めします。